実は歳を経るごとに好きになっていく名編。NHKの「さよならコロンボ特集」で見たのが初見なのだけれど、「仮面の男」と同じく、詰め手やトリック云々ではなく、犯人とコロンボの魅力とドラマと演出の妙、そして吹替えの魅力により、忘れられない一本になっている。
今回、NHK4Kで見たのだけれど、序盤のコロンボとハッサン・サラーとのやり取りで、コロンボのセリフがNHK版ではごっそりカットされていた事に、今さらながら気づいた。
「この一件は外から入りこんでやったんじゃない。内部の者がやったんですよ」
「どうしてそう思うんだ?」
「内部の犯行です」
「ああ、それは判った。それはもう聞いたが、そう断定する根拠は?」
「犯人は金庫の番号を知ってました。外の過激派は知らんでしょう」
「どうして番号を知っていたというのだ。どんな理由からそう結論したか。確固たる事実を挙げて答えて貰いたいものだな」
「天井から落ちた漆喰の粉ですよ。爆発のおかげで天井から漆喰の粉がバァッと降ってきましてね。そこら中に積もったんです。いいですか、金庫から持ち出した書類の灰の上にまでも積もっていたんですよ。だからどう考えてもです、書類は爆発前に金庫からだされて燃やされたんです。でなきゃ、漆喰の粉が積もるはずないでしょう」
「んー、見事な観察だ。すると金庫は何者か番号を知っている者が開けた。君の推理では、当総領事館で働いている何者かだ。これは重大問題だな。まあしかし、事実は事実だ。私にできる事はあるかね?」
赤字のコロンボのセリフを中心に、ハッサン・サラーのセリフも微妙に調整されている。現場を初めて見た際、コロンボが書類を気にして天井を見上げるシーンがやたらと強調されていたのだけれど、その答えがここにあったわけだ。ずっと知らなかった。
「金庫爆破前に書類が持ち出されていた」は計画をぶち壊すかなり重要な指摘なので、ここを切るかぁと驚いた。正直、切るところはほかにいくらでもあるだろうに。
「ハッサンサラーの反逆」の魅力はコロンボとサラーの距離感にあるのは間違いなく、あらゆる局面で、二人の会話は漫才のごとく、独特のテンポとじわりとしみ出す面白さを秘めている。
終盤、二人の関係性が刑事と犯人に確定した後でもそれは維持されていて、冷徹で無慈悲、承認欲求の塊のようなサラーに対しても、やっている事ほどの嫌悪感を覚えない。一方で、歴代犯人の中でもかなり共感性が低い犯人に対し、土壇場でずばっと足元をすくってみせるコロンボにスッキリさせられたりもする。
本当に不思議な魅力だ。これはそのまま「仮面の男」にも当てはまる。
悪辣さから、何気に孤独なサラーに対し、エチケットもルールも知らないながら、素直に他国の文化を尊重し、素直に、茶目っ気たっぷりに教えを乞うコロンボが、終わってみれば領事館の様々な人たちからの共感を得ているという流れも、大きな見どころであり、それが共感性が低い犯人の作品でありながら、どこかほっこりとした気持ちにさせてくれる一因だろう。
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