怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と橘警部逃亡!

  • 「特捜最前線」第277話「橘警部逃亡!」(脚本・長坂秀佳 監督・野田幸夫)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

 

新宿中央署管内で広まる覚醒剤。その供給源である山根組壊滅を狙い、中央署と特命課の合同捜査が行われた。中央署には、三羽がらすと呼ばれる刑事たちがいる。古参警部の稲成、理論派のエリート警部補の黒下、温情警部補の宮田川である。だが、数回にわたって行われた手入れはすべて失敗。橘は、山根組構成員樋口の母親から、覚醒剤に関する情報を得る。母親は、息子の更正を橘に託し、情報を教えたのだ。だが、手入れは失敗。樋口家は放火され、母親は死亡。息子も翌日死体で発見された。
捜査情報がもれている。確信した橘は、新宿中央署に揺さぶりをかけ始める。情報の漏れ方から見て、もっとも疑わしいのは、三羽がらすである。彼らの中にスパイがいるに違いない。橘はスパイの顔を知るというちんぴら銀次を署に連行。取調べを始める。だが、スパイの報復を恐れ、銀次は口を割らない。ついには半狂乱となり、取調室内で自殺してしまう。
橘は銀次を自分が殺したこととして、その場から逃走。新宿中央署は、「殺人の容疑者橘」を全力で追い始める。
情報を流したため殺害された母親。責任を感じた橘は、逃亡犯となりたった一人で覚醒剤組織に挑む。はたしてスパイの正体は? 敵組織に単身潜入した橘の運命は?

  • 私はやっぱり橘が好きらしい。未見であったため、これがどうしてファン投票の上位に食いこんだのか判らなかったのだが、見て納得。
  • 長坂秀佳は、ドラマに対する先入観をすさまじい形で裏切り、こちらの度肝を抜く。「凶弾」も「誘拐」もそうだ。「どうせこうはならないだろう」と油断していると一本背負いを食わされるのだ。
  • 今回も見事な背負い投げを食らった。びっくりした。唖然とした。
  • こうした大冒険をしても、それがしっかりと着地できるのは、橘と桜井というツートップがいればこそ。本作は「6000万の美談を狩れ!」と対になる物語である。この二人の関係は最後まで良い形で貫かれ、大団円の一助となる。
  • 今の目で見てしまうと、「スパイ」が誰なのかは明らか。それでも、それを隠すための努力があらゆるところで行われていて、感心する。
  • 橘潜入からは、恒例、敵の親玉との駆け引きが始まる。今回は、特大の駆け引きが用意されているので、全体としては控えめ。
  • 山根組憎し、で始まった物語だが、ラストでは、橘と桜井の物語になる。その辺は、好みの分かれるところかも。橘の正体がばれてしまう!? というサスペンスが控えめなため、山根組一網打尽が、もう終わり? に思える……のは仕方ないか。でも、そんなことはラストシーンで吹き飛びますから。
  • 本作は「特捜最前線 BEST SELECTION BOX Vol.1」に収録されているので、興味ある方はぜひ。