- 某氏より、ネットで見つけたという「Mr.Monk and the Leper」の日本語字幕つきDVDを頂戴した。英語字幕付きで見たので大意は掴めていたけれど、いくつか判らない部分があった。これで細部も埋まり、万々歳。
- このエピソードはシーズンを代表する傑作だったと思う。第5シーズンはモンクの行きすぎた自虐ネタや障害者すら笑いものにするブラックな展開が中心で、推理部分は薄かった。このエピソードは恐ろしいほどにブラックな分、推理ものとしての伏線や展開が綺麗にまとまっている。
モンクは夜半、場末のバーに呼び出され、怪しい依頼人と面会する。包帯で顔を覆い、サングラスをした男は、とある大会社の社長であった男。七年前、気球旅行の途中行方不明となり、既に死んだものと思われていた。だが、男は小島に漂着、数年前に帰国したという。にもかかわらず、生存を明らかにしなかったのは、彼はある病気にかかっていたから。
その場を逃げだしたモンクだが、ナタリーの説得により、再度、男と会う。男の依頼は、妻が住む家から浮気の証拠となる写真を盗みだしてくれというものだった。まもなく丸七年たち、失踪宣告がなされる。そうなれば、自室から写真が見つかる恐れが。妻に迷惑をかけたくないという男の願いに、モンクとナタリーは応えることにしたのだが……。
(ネタばれが入ります)
- 握手した手を九時間あらったり、灯油をかけて火をつけようとするモンクのことは前の日記に書いた。一方でナタリーは、巨額の報酬に目がくらみ、何とか依頼を受けようとモンクを説得する。同情と寛容を説き、専門医の許へ連れて行って、「病は伝染しないし、治る病気である」とレクチャーまで受けさせる。
- ナタリーとその医師は一目惚れ。その後、デートをする。車の中で濃厚なキスをして抱き合った後、医師は自分が子供のころ「病」であったが現在は完治していることを明かす。
- 逃げだしたナタリーはうがいを繰り返し、消毒液の風呂に入り、翌日も消毒液でうがいを繰り返し、挙げ句、消毒液を一気飲みする。
- 事件解決後、結局、ナタリーと医師はつき合うことに(その間の経緯は画面には出ない)。それでもモンクは、医師の傍には近寄らない。ただ、ナタリーの娘ジュリーは、何の抵抗もなく医師と握手をする。
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このエピソードでは、病気に対する人々の建前的な対応を皮肉っている。
他人には偏見を持ってはいけないと言いつつ、実際、自分がそうなったら消毒液の風呂に入るナタリー。 -
神経症とはいえ、徹底的に偏見を全面に押しだして、最後までコミュニケーションを拒否するモンク。
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少し回り道をしつつも、結局は偏見を乗り越えるナタリー。
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最初から何の偏見ももたない子供ジュリー。
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「どれだけいい子ぶったって、あんたも偏見を持ってるでしょう? 笑ってはいられないよ。ちゃんと考えなさい。一番美しいのは誰?」と鋭いメッセージが突き刺さる。
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同じ病気でも、国によってその受け取り方は違う。モンクのこのエピソードは簡単には放送されないだろうし、されたとしても良いことはないだろう。第一には、この病気で不当に苦しんだ人たちが大勢いて、未だ完全には救われていないから。第二は、このエピソードが含むメッセージを理解できる人はいないだろうから。