怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

ヘビを愛した容疑者の思い出

f:id:Muho:20191217142325j:plain



  • ああ、何だかんだで、一週間って早い。週回遅れですが、ヘビを愛した容疑者の思い出。
  • 「ヘビを愛した容疑者」は「小鳥」に次ぐ第二話。「小鳥」はプロトタイプということもあり、「ヘビ」が実質的な第一話。「小鳥」を書いていた時点で、次は「ヘビ」と決めていた。このシリーズは「あまり人が飼わないペット」がテーマであり、そこで一番に思い浮かんだのが、ヘビだったから。
  • いや、実際、ヘビを飼われている人は多いし、ペットとしてはメジャーなのだが、最初はそんな認識だったのだ。さて、取材をしようと腰を上げたものの、回りにヘビ飼っている人はいない。困っていると、何と、別の出版社の担当編集さんが声かけてくれた。「知り合いにヘビ飼っている人、いますよ」。
  • その編集さん、何しろシリーズを連載している出版社とは別会社の方であるから、ヘビに協力しても何の得もない。それなのに、先方とコンタクトを取り、休日だというのに、取材に付き合ってくださった。ちなみに、その方は今、すごく偉くなって、もう私の担当を外れてしまった。お元気だろうか。
  • 編集さんと訪れたのは、湾岸近くのマンション。その一室で、ヘビは飼われていた。白のコーンスネーク。真っ赤な目が愛らしかった。ヘビはご機嫌で、ハンドリングすると、するすると首や肩に巻きついてくる。ただし、ヘビは脱走の名人なので、そこは気をつけるよう言われた。
  • かわいいといっても、そこはヘビ。部屋から逃げだして廊下にでも出たら、大騒ぎになるだろう。ちなみに、トイレの便器の中に逃亡、別の部屋の便器から顔をだしていた……という話もあるのだとか(真偽は不明)。
  • ヘビの種類にもよるけれど、それほどスペースはいらないし、温度管理などに注意はいるが、飼育自体はそれほど難しくはない。エサも市販のものなどが充実していて、何より鳴いたりしないので静か。マンションなどで飼うにはとてもいい、と解説してくれた。なるほど、である。
  • ヘビの見た目から、表面がしめっていて、生臭いのではないかと思うかもしれない。実際、よい環境で飼われているヘビはほぼ無臭だし、表面もサラリとしている。不快感はまったくない。小説では、動物に対する既成概念や思いこみをひっくり返すことも目的の一つだったので、そうした情報も盛りこんだ。
  • ヘビへの「嫌悪感」払拭を目指す一方で、逆に「エサやり」は小説のキモだなとも思った。ドラマではあまり詳細に描かれないと思うが、肉食のヘビへのエサやり。市販のマウスなどをどうやって与えるのかは、絶対、苦手な人がいると承知の上で、やや詳しめに書いた。
  • 第二話なので、薄圭子のキャラクターもまだ定まっていない。でも、給餌シーンのやり取りを書きながら、自然と固まっていったように思う。冷凍マウスを解凍するくだりの チーン! 「さあ、できた」「もうできたのか?」あたりで、二人のやり取りの方向が決まっている。
  • 須藤が薄の部屋前に行くと、保護した動物が中にいて、薄が必ず怪獣の名前をつけているーーお約束がある。二話はどう猛なカラスだったが、なかなかよい怪獣が浮かばない。当時、ミクシィでそんなつぶやきをしたら、杉江松恋さんが「リトラは?」とすぐに書きこんでくださり、即決した経緯がある。