- CSで再放送中の相棒。「相棒」の「長坂秀佳」である「櫻井武晴」作品をピックアップして見て行く。
シーズン1 第7話
「ずいぶんお待ちになりましたねぇ、マリオンで」
バー「リメンバランス」のバーテンダー、三好倫太郎はオーナーである倉沢を店内で刺殺するーー。
銀座近くの空き地で、倉沢の刺殺体が発見される。倉沢は都内で10件の飲食店を営む倉橋チェーンのオーナー。しかし、うち9件の経営状態は良いとは言えず、唯一の例外が、バー「リメンバランス」だった。店のバーテンダー三好のカクテルは好評で、缶飲料にして売り出すという話も進んでいた。捜査一課は動機なしとして三好を容疑から外すが、杉下だけは彼に興味を持つ。遺体からはアルコール、梅干しにペパーミントの成分も検出。杉下はリメンバランスを訪れ、三好に「梅干し」入りのカクテルを作るよう注文する。三好が犯人と確信する杉下だったが、具体的な証拠はない。そんなとき、イギリスからやってきた美和子の叔母、アキコ・マンセルが思いがけないヒントを彼に与える。
蟹江敬三がバーテンダーを演じた、シーズン1の中でも名編とされる一本。三好が犯人と視聴者に先に明かす倒叙形式。そしてテーマが酒。「刑事コロンボ」でも1、2の人気を誇る傑作「別れのワイン」へのオマージュであることは間違いない。水谷豊と蟹江敬三のやり取りも珠玉であり、特に二回戦の「梅干し」を巡る駆け引きは素晴らしい。「普通は考えられないカクテル」を容疑者にわざと作るよう仕向ける、「魔術師の幻想」の絶対開けられない鍵パターンも憎い二段オチで決まっている。ただ、今回の場合、殺人にどこまで計画性があったのか、トリックはなく遺体を遺棄したのも、かえって自身が疑われるような場所で、今ひとつ、犯罪計画としてはピンとこない。杉下がなぜ、いきなり「リメンバランス」を疑ったのかも曖昧。検死結果を聞き、体内にアルコールがあったからというのなら判らなくもないが、それを聞いたのは、三好を訪問した後である。しかも、これだけのヒントがあれば、いかな捜査一課でも、リメンバランスを外すような事はしないだろう。杉下対三好と並行して亀山とアキコ・マンセルのドタバタが描かれ、それこそが三好のドラマと結実するのだけれど、この偶然性をとやかく言うのは野暮だろう。ただ、どうもすれっからしのこちらとしては、今作を「感動の傑作」と呼ぶにはいささか抵抗を覚えるのである。そして私は今作の白眉は「マリオン」で待合せの方だと思うのよね。これはアキコが長らく日本を離れていたこと、街の変化を象徴するとてもよい一幕だと思う。
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