- テアトル銀座で公演中の「黒蜥蜴」を観に行く。「黒蜥蜴」は大好きな作品の一つで、映画やテレビなど、数え切れないほど見てきている。ただ、美輪明宏版は数年前、W0W0Wか何かで放送したものを観ただけ。むろん、生は初めてだ。2時半開演、6時終演。休憩三度を含む、3時間半強の公演。隅から隅まで、すべてが美輪明宏だった。中でも第一幕、岩瀬早苗誘拐から失敗まではとにかく圧巻。緑川夫人と早苗とのたわいないお喋りに始まり、誘拐作戦の鮮やかな手際、明智と緑川夫人の腹を探り合う火花散る会話劇。すべてがアートの域に達しているにもかかわらず、乱歩の「通俗」テイストが厳然と存在している点も素敵だ。当たり前のことではあるが、この公演は美輪明宏だから成立するものであり、現代に起きた奇跡のようなものだろう。奇跡を間近に観ることは感動的であるし、自らのエネルギーにもなる。また明日からがんばろう。