怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

子連れ狼3

  • 第12話 胸底の月(脚本・長坂秀佳、監督・斉藤武市)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


 いよいよ江戸入りを図る拝一刀親子。だが、陸路、海路ともに柳生の目が光っている。柳生烈堂は全国の柳生を江戸に集め、総掛かり体勢で待ち受ける。さらに烈堂は、御船手目付向井将監に対し、御座船派遣を命じる。異を唱えたい将監ではあるが、烈堂は総目付。逆らうことはできない。
 一方、拝一刀は償金を狙った荒海水軍黒若衆の襲撃を受けていた。度重なる攻撃をことごとく退ける一刀。必殺を誓う黒若衆の女若頭は、単身、御座船にもぐりこむ。
 海路の監視のため、派遣されてきたのは、草の術を得意とする群雲柳生。陸路、海路ともに完璧ともいえる布陣が敷かれている。一刀はいかにして、これを突破するつもりか。
 一刀の考えを唯一人、見抜いていたのは、向井将監。陸路も海路も取らず、目指すのは地獄船。小舟で沖にこぎだし、やって来るであろう御座船を待つ。敵の船に潜りこみ突破を図る一刀の奇策である。命綱をたらし、一刀を船上に引き上げる将監。相手は海原の小舟に乗る親子。一方は多勢を頼み、大筒装備の御座船。武士道を重んじる将監は、この卑怯な戦い方が許せなかったのだ。将監対一刀、一対一の勝負が始まる。

  • 原作はここまで。だが、長坂脚本は止まらない。
  • 将監は一刀に敗れるのだが、遺言として一刀を江戸に送り届けるよう言い残す。だがおさまらないのは、将監の息子。父の仇と一刀を弓矢などで狙うのだが……
  • 一方では、償金目当てに一刀を狙う荒海水軍の女若頭。その切先は大五郎に向けられるのだが……
  • やがて起きる連続殺人! 向井家家臣が次々と殺害されていく。犯人は群雲柳生の生き残りに違いない。烈堂に逆らった向井家の者を、見せしめのため殺害しているのだ。草として城下に入りこみ、柳生の臭いを消し、相手の懐に入りこむ。群雲柳生得意の草の術。向井家の中にもその草が紛れこんでいるのか? 生き残った十数人。犯人はこの中にいる。皆が疑心暗鬼となる中、殺害は続く。そして、犯人の姿を目撃した女若頭も……。
  • 御座船という密室状況下で起こる殺人。犯人は誰か。いやあ、もうたまりませんなぁ。
  • 海賊風に乗りこんでくる荒海水軍を斬って捨てるのは一刀ではなく、将監の家臣。主君の仇ではあるのだが、主の遺言に従う武士道が何とも美しい。
  • そして、息子。仇討ちに走る若者が、柳生との戦いを経て、御船手頭へと成長、武士としての道を貫いた上で、一刀と対決する。その成長を同じセリフをくり返すことで表現している脚本の見事さよ。
  • 原作は原作でとびきり面白いのだが、本作は良い意味で別物。数ある長坂脚本の中でも、ベストに入る傑作である(断言)。
  • あ、でも次回からは、安倍頼母登場。長坂節炸裂の妖怪キャラクターである。長坂ワールドはまだまだ続く。