ミステリ・マガジン7月号、発売中です。海外ドラマレビュー、今回は「iゾンビ」を取り上げています。(写真載ってなかったけど、使わせてくれなかったのかな。ケチくせえ。ソンビに食われろ)
ある出来事でゾンビとなってしまったリブは、食糧として人間の脳を得るため、研修医の道をあきらめ、検死医に。彼女は運びこまれてくる遺体の検死をしながら、こっそり脳を頂戴し、飢えを凌いでいた。だが、脳を食べることには深刻な副作用が。脳を食べることで、死者の生前の記憶がフラッシュバックとして蘇るのだ。さらに、死者の人格が憑依し、リブの人格すら変わってしまうことも。
ゾンビとなり、生きる目的(笑)を見失っていた彼女だったが、ただ一人真実を知る職場の上司の進めで、事件解決のための捜査協力を行うことに。リブは霊能力者として捜査に加わり、刑事とともに難事件を解決していくのだーー。
いやもう、この設定だけで見る価値あり。大人気ですでにシーズン4の制作が決まっているとか。
シーズン1はDVDあるいはNetflixで見られます。
「iゾンビ」
第1話
優秀な研修医、オリビア・ムーアは、ライバルでもある同僚から船上パーティに誘われる。婚約者とのデートを止め、そちらに参加したリブだったが、何とパーティにゾンビが乱入。襲われたリブも死亡。だが、その後ゾンビとして復活する。人の脳みそを食べ続ける必要があるリブは研修医を止め、検死医として再スタート。婚約者とも別れ、日々、モルグの遺体から脳みそを盗み食料とする生活を続けていた。だが、脳を食べることにはとんでもない副作用が。脳の持ち主が持つ生前の記憶がフラッシュバックしてくるのだ。殺害された人々の記憶を見る。その特殊能力を活かし、彼女は殺人事件の解決に乗り出していく。協力者は検死医の上司ラビィと殺人課の刑事クライブ。リブの夢は「ゾンビ」を治し人に戻ること。果たして彼女の夢はかなうのか。どうです? この設定だけで見たくなるでしょう。
第2話
著名な芸術家ハビエルがアトリエで殺害された。発見者は妻と友人。捜査に当たるクライブは、最初から妻が犯人と決めてかかる。そんな中、ハビエルの脳を食べたリブは、彼が浮気をしていたビジョンを見る。それは、妻が犯人であるというクライブの主張を補強するものなのだが……。だが妻は、愛人の存在を知っており、すべては合意の上であったと証言する。そんな中、リブの元には、彼女をソンビにした張本人であるブレインが! なるほど、きちんとした縦軸も用意されているのね。食べた脳の人物にリブが影響を受けるという設定はとても面白い。完璧。今回は芸術家なので、色遣いや絵画の趣味にうるさくなり、とんたんかんなワールドが展開する。
第3話
害虫駆除業者のマービン・ウェブスターがひき逃げされ死んだ。彼の脳を食べたリブが見たビジョンは、なんと彼自身が人を殺す場面。マービンの正体は殺し屋だったのだ! しかも彼が殺した起業家の事件は、ホームレスの仕業ということになっており、まもなく公判が始まるという。警察は誤認逮捕していたのだ。無実の男性を救うため、リブは殺し屋マービンを雇った男を探し出すことに。しかし、ソシオパスの脳を食べたため、リブも感情を失ってしまう。さらに、事件の担当検察官はリブのルームメイト。事件をひっくり返すということは、彼女を窮地に追いこむことでもあった。リブの決断は……? 縦軸として、リブをパーティに誘った同僚の末路とブラインの暗躍が描かれる。盛りだくさんな上、マービンの事件はちょっとややこしい。マービンが依頼を受け男を殺害。その罪を別の男性になすりつけるも、マービン自身は依頼人の手によって殺害される。物語は高速で転がりつづけ、あっというまに大団円である。これ、前後編にしてもいい充実度。
第4話
指、大臼歯を失ったアジア系男性の死体。身元不明であったが、クレイブはなぜか彼がサミー・ウォンであると断定する。さらに、彼の脳を食べたリブは、サミーが所属していたギャング団とクレイブが関係している事実を掴む。クレイブは元風紀課の刑事。彼はなぜ、殺人課に異動となったのか。探りを入れ始めたリブだが、クレイブの悪評ばかりが聞こえてくる。果たして、彼の正体とは。一方で、街にはけっこうな数のゾンビが潜んでおり、苦労して「食料」を手に入れている事実が判明。ブレインは富裕層に「脳」を届けるというビジネスを始めていた。なるほど、脳みその密売組織……すごいこと考えるなぁ。そして、人としての理性を失う「無敵ゾンビモード」!
第5話
リブの大学時代の同窓生ホリー・ホワイトがスカイダイビング中に墜落死した。彼女は飲料メイカーマックス・レイジャー社の社員。一緒に飛び降りたのも、すべて社員たちだった。まもなく、彼女の身体から強力な薬物が検出される。落下中、彼女は意識をなくしていた可能性があった。薬を飲ませることができたのは、直前まで一緒にいたスカイダイビング仲間しかいない。ビジョンを元にしたリブの推理は……。一方、リブの元婚約者メイジャーは友人を含む失踪者の謎を置い始める。その先にいるのは、ブレイン。リブの知らないところで、事態は危険な様相を……。冒険を追い求め自由に生きたホリーの脳のため、新しい価値観に基づいた生き方を知るリブ。その清々しい表情が胸を撃つ。すごいドラマだなぁ。
第6話
サイモン・カトラーの腐乱死体が自宅で発見される。引きこもりのネットオタクであった彼は、人知れず自宅で死に、1-2週間の間、発見されなかった。状況は事故死であったが、リブのビジョンで、彼は誕生日カードに仕込まれた罠によって殺害されたことが判明する。彼はネットを介して様々な人の人生を破滅させた悪名高い男であり、恨みを持っている者は多い。引きこもりゲーマーとなったリブの推理は。平行して描かれる、メイジャーの捜査とブレインが構築した密売ルートに生じる綻び。物語はいよいよ後半戦に!
第7話
森で瀕死のエミリー・スパロウが発見される。彼女は妊娠していたが、赤ん坊は無事だった。行方不明となった当初、エミリーは恋人ディランによって殺害されたとの見方が濃厚だった。新たな局面を迎えた事件だが、エミリーの両親はディランが犯人との見方を変えない。しかし、エミリーの脳を食べたリブが見たビジョンは、両親によって監禁されるエミリーの記憶だった。妊婦の脳を食べたことでリブに母性が目覚め、けっこうなドタバタに発展する。そんな中で、いよいよクローズアップされてくる、ある人の正体。何気ないふりして、ゾンビが街に溶け込んでいる世界観って、ゾンビにあまり詳しくない私にはすごく新鮮。
第8話
人気ラジオ番組グレート・モーニング・セックスのDJサーシャが放送中、感電死する。マイクに仕掛けがあり、それに触れ感電したのだ。サーシャはチャタヌーガなるリスナーともめており、殺害予告もされていた。警察はチャタヌーガの行方を追う。動機を持つ者は複数。脳を食べたリブの見たビジョンが示すものは……。錯綜するDJ殺害事件もいかすが、メイジャー絡みのサスペンスが盛り上がる。ゾンビもののセオリーも押さえていて、実に楽しい。
第9話
元狙撃手で、現在はサバイバルゲームのインストラクターをしていたエバレット・アダムスが森で射殺された。彼には離婚歴があり、別れた妻と子供の親権を争っていたらしい。彼の脳を食べたリブは、PTSDの症状に悩まされ始める。一方、ブレインの仕事について知ったリブはある決意を固めるが……。実のところ、エピソードの大半はブレインとリブのロマンスに割かれていて、それはそれで効果的。なので事件の方はあっさり「最新技術」の利用で片付く。これ、十年後に見たらどんな感じなんだろう。最近は何でも「これ」だからなぁ。
第10話
ブレインの殺害に失敗、さらにメイジャーとキャンディーマンたちの闘いはいよいよ決定的なものに。そんな中、オブザーバーの記者、レベッカ・ヒントンの死体が運ばれてくる。自宅で侵入者ともみ合いとなり階段から転落、死亡したのだ。脳を食べたリブは彼女の記憶から犯人の顔を知ることとなる。そしてそれは、あの飲料メーカーへと繋がる事件へと……メイジャー、哀れすぎる。それにしても、今後、レッドブルを飲むために、このゾンビを思いだすんだろうなぁ。
第11話
メイジャーが入院している療養施設で、患者の一人スコット・Eが自殺に見せかけて殺害される。やがて、被害者がワシントン湖の事件の目撃者であり、証拠写真を所持していたことが判る。そこにはリブの姿も写っているかもしれない。だが、肝心のデータはどこにもない。脳を食べたリブだったが、その影響で薬物依存状態となり、様々な幻覚が見え始める……。これ、すごい。ある程度、ネタは推測できるんだけれど、本当にやってしまうところがすごい。そしてそれをただの驚きで終えるのではなく、きっちりと主人公の心情に落とし込んで終わる。見事。こうしたパターンは「仮面ライダー」「相棒」などでさえ時々見るようになったけれど、びっくりで終わってしまって、面白くもなんともない。
第12話
ゾンビとしてよみがえったあの男を轢き殺してしまった若者たち。死体を埋め、隠蔽を図ろうとするのだが、相手はゾンビだし……。「ラストサマー」へのオマージュで幕を開ける、小技の効いた一本。ミステリー要素も濃いが何しろ、犯人、ゾンビなんで。とにかく、ゾンビゾンビゾンビ。
第13話
シーズン最終話。ゾンビを倒し、「ラストサマー」事件の真犯人を突き止めたリブたちだったが、元凶となったあの飲料メーカーの陰謀、そして、ブレインたちに捕まったメイジャーの運命……ええ、この人がゾンビハンターに!? という夢と希望と何も解決しない状態を残して、すべてはシーズン2へ。早く、早く見たい。早く……。