怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「恐怖のテレホン・セックス魔」

  • 特捜最前線第94話「恐怖のテレホン・セックス魔」(脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


[ストーリー]
電話の数482万台、普及率60%、嫌がらせ電話の数12万件。女性10人中8人が嫌がらせ電話の被害を受けている(1979年)。白木容子は夫と子供2人の4人暮らし。そんな彼女の許に、イタズラ電話がかかりはじめた。嫌がらせの度合いは次第に増し、容子は半ばノイローゼ状態に。彼女は知り合いである船村の妻に相談。船村刑事は白木宅を訪れ、電話をかけてきた犯人に一括を浴びせる。
だが、この一言はかえって犯行をエスカレートさせることに。犯人は夫の勤め先に電話をかけ、容子が浮気をしていると吹き込む。事態を重く見た船村は単独で捜査を開始。船村対電話魔の対決が始まった。
犯人は電話口で猥褻な言動をくり返す。船村はその声を録音。背後の音声を元に犯人像をしぼりこむ。電話の多くは昼休みの時間帯にかかる。使用しているのは公衆電話。バックには都電の音が入っている。犯人は白木家の比較的近所に住み、勤務時間中は席をはずすことができない男。
その間も、犯行はますますエスカレート。たまりかねた容子は電話番号を変えると提案。番号を変えられては、犯人への糸口がなくなる。だが、船村の説得も虚しく、容子は番号を変える。
だが、犯人は親類より巧みに番号を聞き出し、イタズラ電話を続ける。注文していない下着が届く、真夜中に救急車を呼ばれる、葬儀の花輪を送られる、ついには玄関先に猫の死骸を吊り下げられることに。
電話の回数から、犯人が水曜定休の仕事をしていると推理した船村。やがて森浦という理容師が浮かぶ。犯人は彼に間違いない。容子に対する行状から脅迫罪の成立は確実。だが証拠がない。イタズラ電話の現場を押えようと森浦を尾行する船村。
しかし、狡猾な松浦は逆に船村を暴力刑事に仕立て上げ、ついには辞職寸前にまで追い込んでしまう。辞職覚悟で捜査に臨む船村。その結末は。

  • これが書かれたのは1979年。とにかくこの事実がすごい。新宿駅西口にはずらりと赤電話が並んでいた時代である。
  • 犯人が行ったことは、基本的にはイタズラ電話のみ。それが一人の人間を徹底的に追い詰め、家庭崩壊寸前の状態に陥れる。現代であれば、充分「犯罪」として認識もされようが、当時はまだ「しょせんイタズラ」と思われていたわけで、そこに着眼した先見性をただただ評価するしかない。
  • 本作の犯人松浦を演じているのは、西田健。「岸田隊員」と「テレホンセックス魔」。この二役を抜きにして、西田健は語れない。
  • 「電話」を凶器に見立て、徹底的に被害者を痛めつける前半。狡猾極まりない犯人と船村が対決する後半。見事なコントラストである。これもまた、ベスト10に入るかなぁ。