- 吐き気はましになったものの、熱っぽさは変わらず。仕方なく病院に行こうとするが、引っ越して三ヶ月、かかりつけの病院も決まっていない。前に住んでいたところには、腸閉塞でお世話になった素晴らしい病院があったのだが……。ただ町医者も含め、病院自体はたくさんある地域なので、近めのところを選び、ふらふらしながら出かけていく。町医者の利点は待ち時間の少なさよ。あっというまに診察。
- 結果は、ノロウィルス。やられたぜ。先生は落ち着いた感じの良い人なのだが、いかんせん喋るのが好きらしい。ウイルスとは何か、細菌とは何か、免疫とは何かをカルテに図解まで書いて教えてくれた。
「スタートレックを知っているかね？」
「へ？ あ、ああ、よーく知ってますよ。DVDも全部持ってますし、スタートレックマガジンはまだディアゴスティーニから送ってきます」
「(ニヤリ)つまり、口の周りには宇宙連邦の大艦隊がいるわけ。それで守っているんだ。だから、ウィルスクラスの宇宙船が来ても撃退してしまうの。でも、大艦隊だけに、特殊部隊のようなものには対応できないんだな。よくあるでしょう、少人数で敵の宇宙船に侵入するようなヤツ。ウイルスってのはそういうものでね……ウンヌンカンヌン」
- 通常であればとても面白い講義だったのだろうが、こっちは微熱と吐き気でフラフラなので、遠い目をして聞いているしかなかった。数分の講義で、先生が何を言いたかったか。つまり、ノロウィルスの持続時間はせいぜい48時間。昨日発症したのなら、明日には間違いなく治る。解熱剤と吐き気止めをだすことはできるけれど、これなら、自力で直した方がいい。だから、薬はださないよ。
- ああ、そうですか。治療費は800円だった。ヘロヘロの体で鳥に餌をやり、寝る。なぜかもの凄くたくさん眠れた。夜の十時ごろ、つきものが落ちたように気分がよくなり、熱は下がる。吐き気もなくなり、胃のあたりに違和感が残る程度。これなら、明日は起きられるだろう。
