怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

相棒の思い出

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  • 「相棒」といえば、漫才の台本に尽きる。犯人と被害者が漫才師であるのだから、当然、作中ではたっぷり漫才をやって欲しかった。
  • 漫才といっても、いろいろなパターンがあるが、二人にやって欲しかったのは、「夢路いとし・こいし」師匠のような、とぼけたしゃべくり漫才だった。漫才の台本は、作中で使う使わないに関わらず、最初から最後まで、まるまる一本分用意するつもりでいた。さて、その台本をどうするか。自分で作ってもよかったが、どれだけ知恵をしぼったところで、結局は大倉崇裕の作ったものからは抜けだせない。漫才の台本からは、どうしても、大倉崇裕臭を消し去りたかった。
  • そんなとき観たのが、「KUSARE芸道R」の芝居だった。主催である岸哲夫さん(http://ameblo.jp/pishisan/)の脚本、演技に痺れた。友人を介して何度かお会いした経緯もあり、思い切って、漫才台本丸々一本をお願いした。岸さんは快諾して下さり、本当に丸々一本、漫才の台本を作ってくださった。
  • 台本は素晴らしいものであり、小説の演出によってぶつ切りになんてできないものだった。結果、いただいた台本は、ほぼすべて作中で使わせていただいている。
  • 岸さんには、今でも感謝している。岸さんなしに「相棒」は成立しなかった。
  • 「相棒」が捧げているのは(コロンボ好きには明々白々であろうが)、「忘れられたスター」である。忘れられたスター→木に登る→突き落とす! の流れが一瞬で閃いた。
  • 「相棒」で一番苦労したのは、実はタイトルだ。それまでのタイトルはどれも刑事コロンボを意識した「○○の○○」や「○○した○○」でやってきた(『相棒』の前に『マックス号事件』があるが、連載時は『福家警部補の帰還』というタイトルで発表していた)。今回も当然、その流れを踏襲するつもりだったが、どうにもならず、ふと浮かんだ「相棒」というタイトルに魅入られる格好で、決定となった。コロンボ風タイトルからの逸脱は、単行本化の際にけっこう突っこまれた。「相棒」や「プロジェクトブルー」に後悔は一切ないが、三冊目「福家警部補の報告」からは「○○の○○」にこだわってタイトルをつけている。