怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

ペリー萩野さんによる「いきもの係」評

  • ちょっとうれしい記事。
  • 小ネタをはじめ、ここで指摘されていることは、ほぼすべてドラマオリジナル。製作スタッフの才能と努力によるものだ。原作として私の小説を取り上げていただいたのはとても光栄なことだしうれしいけれど、ドラマはまた別物だ。物書きである私があれこれ口を出せることではない。映像製作のプロにすべて委ねた方が絶対に面白いものができると考える。
  • だからキャスティングなどはもちろん、脚本にだってよほどのことがない限り何も言わない(過去、言ったことはないと思う)。ドラマ化でいつも言うのは、「犯人を変えたっていい」。必要であれば、そのくらいしてもまったく構わない。犯人が変わっていた方が、結末を知っている原作者も楽しめていいじゃないか。撮影所見学とかも、なるべく行かない(いきもの係ではつい、お邪魔してしまったけれど……)。厳しいスケジュールで現場はがんばっているのに、原作者がノコノコやってきてその作業が止まってしまっては申し訳ない。とにかく現場ファーストでやってもらえれば。原作者なんて一番最後でいいし、大して気にする存在ではない。
  • それから、枠終了とか終了危機にともなう開き直りって、けっこう怖いんだぞ。「翔べ! 必殺うらごろし」とか「ジェットマン」とか。

 

 夏ドラマの放送回が折り返し地点を迎え、ストーリーもクライマックスに近づいてきた。視聴率では明暗が分かれつつあるが、数字的には苦戦しながらも、専門家の間で高評価を受けている作品もある。『警視庁いきもの係』(フジテレビ系)はそのひとつだ。コラムニストのペリー荻野さんがこのドラマの見どころについて分析する。

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『警視庁いきもの係』が面白い。面白さの秘密は、「堂々と開き直っている」ことだ。
 
 頭に銃弾を受け、記憶喪失となったバリバリの刑事須藤(渡部篤郎)が、リハビリも兼ねて配属された警視庁いきもの係で、天才的な記憶力と知識を持つ動物オタクの薄巡査(橋本環奈)と事件を解決していくというこのドラマ。ポイントは、ヒントがすべて動物がらみという点だ。

 8月13日放送の第6話では、殺人被害者が飼っていたヨウム(オウムに似た別の鳥)の動きから薄が物的証拠を発見。鳥には毒となるアサガオを贈った人物が犯人だと推理する。

 構成がしっかりしたミステリーとしても楽しいが、それ以外は、とにかく遊びだらけ。たとえば、制服姿の薄は、あちこちで「コスプレ?」と言われるのがお約束。そりゃ、橋本環奈ですから。また、おやじギャグを出す須藤は、動物にしか興味のない薄に完全スルーされる。容疑が固まりそうな被疑者について「これはセメントだ」と須藤が言っても、「セメントと砂の違いはわかりますが…」と薄は真顔で返答するのである。

 もうひとりパワーを炸裂させているのが、浅野温子。いきもの係事務担当の田丸(浅野)は、何かあると小走りで駆けつけて「ウフフー!」とうれしそう。イケメン刑事(三浦翔平)の捜査に勝手に付き添い、「行きつけのBARが…」と言われると、「ババア!?」と口をとんがらせる。こんな浅野温子、どっかで…と思ったら、そうです!『あぶない刑事』の真山薫です!!これはもはや彼女の芸風。誰に何と言われようと開き直って思いっきりやります!と清々しいくらいだ。
 
 この他、事情を聞きに行ったおかまバーの店名が「DEKA DANCE」、元刑事のママ(IKKO)が、「デカと捜査線は踊るものよ」と言い出したり、薄の妄想の中で須藤が女装して現れたり、薄に気がある係長(長谷川朝晴)のズッコケや須藤に憧れるドジな巡査(横山だいすけ)が出てきたりと小ネタもそこここに。エンディングは出演者プラス動物着ぐるみ集団のダンスもアリである。

 渡部はおやじギャグから女装、ダンスまで大奮闘。とにかく面白いことは何でもやろうとぐいぐい押す姿勢の裏には、フジテレビ日曜9時枠最後のドラマという事情もあるのかもしれない。9回裏、最後の攻撃、持てる力をすべて出し、思いっきりいこうぜ!ってことだ。

 思えば、日9は2010年、31年ぶりにドラマ枠として復活し、2011年、芦田愛菜と阿部サダヲ主演の『マルモのおきて』が大ヒット。以後、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス』『僕とスターの99日』『家族のうた』などコメディ、ホームドラマ路線で同時間帯のTBSの日曜劇場と激突し続けてきた。(『マルモ』とぶつかったのは、『JIN-完結編』でしたね)そして2013年に一度バラエティー枠となり、2016年春再度ドラマ枠に。

 成長した芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスの『OUR HOUSE』、小雪の『大貧乏』などもあったが、前作、観月ありさ主演『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』から『いきもの係』はミステリー路線へと変化してきた。

 残念ながら日9枠ドラマはなくなるが、「開き直りってぐいぐい」は、今後のフジテレビドラマ復活のカギのひとつになるのでは。『いきもの係』はそれを示していると思う。