- 東京ドーム方面で大変衝撃的なことがあったので、忘れるためDVDで「トゥルークライム」を観る。劇場で見損ねてしまったものだが、これを「つまらん」と言っていたのは、どこのどいつだ。良い映画じゃないか。たしかに「面白い」映画ではないけど。
- 原作が原作なだけに、サスペンス、特にタイムサスペンスを期待していた人には、もう完全なる肩透かし映画であったろう。その手の緊迫感は削いで削いで削ぎまくっている。これはわざととしか思えないほど。
- アクションスターは、自分の年齢に応じ、どこかで変化しないといけないと思う。50、60にもなって30、40代と同じものを撮ろうとすると失敗する。スタローンやシュワルツネッガーは完全に失敗、ハリソンフォードもやばい感じがする。バンダムやセガールはそこにいきつくまでに失敗しているから心配はない。イーストウッドも「ピンクキャデラック」から「ルーキー」あたりまでは失敗つづき。大きく変わったのは、やはり、「許されざる者」からだろうか。それ以降の映画は、「老人の再生」がテーマ。最前線を退いた男が、再び立ち上がる様を描いている。「許されざる者」も「目撃」も「スペースカーボーイ」もそう。「トゥルークライム」も実はその延長線にあり、サスペンスでありながら、どこか牧歌的なのんびりとしたペースで展開していく。つまりあまり刺激的ではない。
- タイムサスペンスの要素を弱めている変わりに、人間描写は緻密。子供と最後のお別れをした直後の死刑囚の顔、薬品が注入される寸前の死刑囚の腕などなど。
- 主人公の家庭問題や職場でのゴタゴタがえんえんと続けば、「こんなはずでは」と思いたくなるのも判るけど、これがクリントイーストウッドの映画なのだから仕方がない。