怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

通院介助は一日がかりと直木賞の悲しい選評

Muho2007-08-29

  • 通院介助の日。最近は身内一人でも通院できるのだが、今日は主治医との面会もあるので、一緒に行く。予約制でもあり、実際、待ち時間はさほどかからないのだが、診察20分、会計20分、薬待ち60分……と結局、一日仕事になる。症状はいろいろ出てきているが、根本の病気自体は快方に向かっているらしい。だが、手がしびれたり、左足がうまく上がらなかったり、強烈な頭痛にみまわれたり……はすべて原因不明。どうしたものか。
  • 「オール讀物」九月号を買い、直木賞の選評を読む。正直、悲しくなった。「吉原手引草」は名著であり、受賞には何の文句もない。この作品を選んだ選考委員の眼力は衰えていないと信じる。ただ、ミステリーを書く者としてはただ、悲しいだけの選評だった。「矮小化」とか「堕」とかいう言葉まで使われて。
  • 選考委員の先生方による罵詈雑言には、慣れているつもりだったけど、今回はあまりにもひどいと思った。そんなにミステリーが嫌いならさ、最初からミステリーを候補から外せばいいのに。毎回、毎回、何でミステリーの作家が嫌な思いをしなければならないのだろう。

  • 浅田次郎は「玻璃の天」について「後半部に至って予期せぬ形になってしまった」と言っている。つまり、あの「殺人事件と解決」のことをいっているのだろう。

  • 渡辺淳一は「玻璃の天」について「全体の仕上がりはいささか回り道が多くて甘い」。この「回り道」の部分があの「殺人事件と解決」なわけね。

  • 平岩弓枝は、「玻璃の天」について、選評を書くことすらしていない。

  • 阿刀田高は、「赤朽葉家の伝説」について「第三部の弱さが気になった」と言っている。第三部はこの小説で唯一、「本格ミステリー」のパートだよ。「玻璃の天」にいたっては、「なぜいま昭和初めの上流社会を描いて、古典的なトリックをあしらうのか、それでなにを訴えるのだろうか」と言っている。つまり、小説は何かを訴えねばいけないということか?

  • 宮城谷昌光が一番ひどかった。受賞作「吉原手引草」について、「趣向のなかにミステリーをとりいれているので、小説世界を矮小にしてしまっている。ミステリーとは、物語の主眼を隠す逆説の形式である。ゆえにもっとも重要な人物が不在になりがちで、空虚な文学に堕ちやすくなる」。「堕」という文字を使ってんだもんなぁ。

  • 林真理子は「玻璃の天」についてあっさりと「リアリティを得ることが出来なかったように思う」と言っている。便利な言い回しだ。

  • 選考委員唯一の良心だと思っていた、井上ひさしでさえ、「玻璃の天」について、「ヒロインの周囲に起こる事件はどうも奇想の色が濃くて、せっかくのおっとりした雰囲気とは合わない……」とか書いちゃってるぅ。

    私は「吉原手引草」と「玻璃の天」を分けたものは、「ミステリー臭」の濃淡だと予想した。その予想はどんぴしゃり当たっていたようだ。

  • 選考委員の面々がミステリーを一段も二段も低い低俗なものと信じているのは間違いないとして、ならばどうして、ミステリーを候補作に上げるのよ。

阪神
岡田監督さようなら。ピッチャーが潰れる前に、試合観ているこっちが潰れるわ。