怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

杉下右京はシニカルか

-酷く忙しくて、テレビも少ししか見られないし、習い事にも行けないし、プラモも作れない。しくしく。

  • そんな中で読んだ、4月28日朝日新聞朝刊の「TVレビュー」というコラム。「相棒」の杉下右京について書かれたものだが、タイトルが「水谷豊のシニカルな役作り」となっている。取り上げているのは、シーズン6の最終話であり、その内容紹介、評価の度合いはまあいいとして、「相棒」の番組紹介が「表だって処理できない事件を捜査する」となっていたりする。これを書いた人、実は「相棒」をほとんど見ていないのではないか? 何となくテーマに社会性がありそうなものだけつまみ食いして、判った気になっている感がぷんぷんする。水谷豊の役作りを「シニカル」と断じてしまうのも、それだと納得できる。逆に「相棒」のファンで全話見ているのだとしたら、いったい何を見ているのだろう、と首を傾げたくなる。たしかに第6シーズン最終話はシニカルだったけれど、杉下というキャラクターはそれだけに止まらない。時に情熱的であり、お茶目であり、人間的でもある。そもそも、シニカルであった杉下が亀山という相棒を持つことで、少しずつ変化していく、それが相棒初期シリーズの魅力でもあった。裁判員制度から釜ゆで殺人まで、振幅の広さこそが「相棒」の魅力なのに、ある一面だけを切り取って「これがすべて」みたいな批評ですごくがっかりした。
  • 杉下右京は「名探偵」であり、名探偵というのは、人の見えていないものが見えてしまう一種の天才だ。だからこそ、一般人からみてシニカルに見える。そういう名探偵像とかに興味も知識もない人が杉下右京を見ると、こういうことになるのだろう。「相棒」が一般に浸透してきたので、これからはいろいろがっかりすることが増えるんだろうなぁ。第6シーズンの低空飛行と併せ、寂しくもあり侘びしくもあり。