- 山と渓谷社から速達が来て、恐れおののく。何か悪いことしたかなぁとこわごわ封を切ると、「山と渓谷」のエッセイコーナー「言葉ふる森」を単行本化するという報せだった。2年前に一度だけ書いたんだった。担当編集さんとクライミングジムに行き、腕がパンパンになって、トイレに入っても紙すらだせないという有様になったときのことを書いたんだった。単行本に入れると判っていれば、もっと普遍的なことについて書いたのになぁ。しまったなぁ。しかも、全然、美しくないし。
- このエッセイの執筆陣、私以外はビックネームばかりで、私の前が立松和平氏で、私の後が森絵都氏だった。その後、樋口明雄氏、笹本稜平氏、万城目学氏、あさのあつこ氏、トリの夢枕獏氏と続く……
- 連載の中で、もっとも愉快だったのは、篠田節子氏の「西寧ーラサ チベット高原鉄道二千キロの旅」だった。便所のこととか、とにかく汚いことばかりがうんざりするほど書いてあって、でも、それを嬉々として受け入れている篠田さんの行動が本気で美しかった。