- 福家シリーズの中で、一番、楽に書けたのが、いまのところ、この作品。三話目ということで、何となく展開の仕方が判ってきたことに加え、「オッカムの剃刀」の次ということもあり、シンプルにまとめようと心がけたためだと思う。
- ネタはほとんどが実体験を元にしている。コンロの電池とかバナナとかライターとか。
- この作品でもっとも思い出深いのは、小鳥に関することだろう。実体験を元にと前述したが、鳥の餌のくだりも、そうだ。当時はジュウシマツを飼い始めて少したったころ。卵をどんどん産み、それがじゃんじゃんかえり、わらわらと数が増えていた。餌の消費量も上がり、しょっちゅう注文していたのを覚えている。
- 小鳥絡みでもう一つ。作中で「ペットショップニノミヤ」という店が出てくる。これは、私がジュウシマツを購入し、飼い方などをいろいろと教えてくれた「ペットショップコミヤマ」が原型になっている。中野にあったお店によく足を運び、店にいる300羽近いジュウシマツを見せてもらったりした。ここは独自で配合餌を作っており、餌はいつもこのお店から、宅配便で届けてもらっていた。このお店も、いまはない。オーナーの方はそれからもしばらくは配合餌の通販だけは続けてくれていたが、それも昨年で止めてしまわれた。今は近くのペットショップかアマゾンで購入しているが、どこか味気ない。
- 「ペットショップニノミヤ」のシーンでは、岩澤ゆかりというアルバイトの女性が登場する。これといったキャラクター設定はせず、流れに任せて書いていたのだが、「人より鳥の安否を心配する」という妙に不思議な人物に仕上がった。四ページほどの登場なのだが、なかなか忘れることができなかった。
- 岩澤ゆかりのキャラクターは、その後、薄圭子という人物となる。「小鳥を愛した容疑者」は、この作品が出発点となっている。