海岸で画家マックス・バーシーニの元妻ルイーズの溺死体が発見された。バーシーニは現在の妻バネッサ、モデルのジェリーとともに、ルイーズの隣の家に住んでいた。独りの男と三人の女の共同生活。コロンボはルイーズがバーシーニの許を離れ、精神科医との生活を始めようとしていたことに注目。彼女の見た悪夢を記録したテープを手がかりに、バーシーニの過去に迫っていく。数年前に見たときは、「つまらん」の一言で片付けていた作品。事前に読んだ小説版の不出来にもよるだろう。今回の再視聴で、認識をあらためた(予想通りの展開である)。旧シリーズと新シリーズのもっとも大きな差違は、「性」への言及にあると「幻の娼婦」などでも述べた。今回もその点は顕著。バーシーニを巡る三人の女性の駆け引き。そのドロドロ部分が鼻について仕方がなかったのだ。今回、私自身が大人になったからなのか、その部分こそが楽しめた。殺人を犯すことにより、犯人が守ろうとしたものが、殺人のために崩れていく。その過程が女性を通して鮮やかに描きだされている。華やかな盛り場がほとんど登場せず、コロンボとの一対一形式で進む「孤独」な画面作りも効果をあげている。途中で退屈することもなく、最後まで集中して見てしまった。