- 鈴々舎馬桜師匠のお誘いで、第234回=三月歌舞伎公演を観にいく。場所は国立劇場。演芸場には何度か行ったことがあるが、大劇場には入るのからして初めてである。
- 公演は新作歌舞伎脚本入選作品集ということで、「実朝」と「斑雪白骨城」。白状すると、歌舞伎を観るのは生まれて初めて。テレビですら、きちんと観たことはない。かなり不安であったのだが……。
- まず気づいたのは、まったく知識がなくても、ストーリーは理解できるのだ、ということ。何を馬鹿なことを、と思われるかもしれないが、私の持っていた歌舞伎のイメージは、「舞台上で役者さんたちが、独特の節回しで、今では使わないような古い言葉を、大仰な身ぶりで演じている」。初見の素人には、話の中味すら理解できない、物凄い芸なのだと思っていた。もちろん、物凄い芸であることに間違いはない。だが、かといって、無闇矢鱈と敷き居の高いものではないようだ。起伏に富んだストーリーで、正味3時間の上演があっというまでした。
- 個人的には源実朝と黒田官兵衛孝高を演じられた中村梅玉に惚れました。何がどうと詳しい説明を求められると困るのだが、とにかく、惹き付けられたとしか言えません。
- 観劇後、オープンしたばかりの資料館に連れていっていただく。馬桜師匠直々の解説つきという贅沢な資料館巡りである。師匠いわく「宝の山」。国立劇場のパンフレットから、絶版本まで、あらゆるものが揃っている。何年何月、どの場所で、演し物は何で、役者は誰……そのすべてが克明に記録として残っているのには驚き。それらがすべて頭に入っている師匠にも驚き。
- 歌舞伎は、知識が無くとも、背景を知らなくとも楽しめる、というのが本日の発見であった。そしてもう一つ、知識を身につけ、背景をよく理解すれば、もっと楽しめるのが歌舞伎なのだとも感じましたです。
- 夕刻、国立劇場から池袋の東武カルチャースクールへ。馬桜師匠が「おもしろ落語講座」というものを開講されているのだ。古畑任三郎、第3シーズン第1話「若旦那の犯罪」を見ながら、「ダウト」を探すという趣向。面白そうだったので、見学させていただく。「本当はこうではないのだけど、エンターテイメントとして成立させるためには、やむを得ない」。この線引きは大変重要だと思う。
- 「半落ち」を巡って揉めているようだが、まったく不粋なことである。こんなこと、私のような者が書いて良いのか判らないが、一読者として言わせていただきたい。いいじゃない、面白かったんだから。