怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

鈴々舎馬桜師匠と独演会

  • 怒濤の金欠月間ではあるが、食事を抜いてでも、落語には行く。本日は鈴々舎馬桜師匠の独演会。池袋演芸場にて。
  • 開口一番は「道具屋」。この「道具屋」の魅力は伏線。恐ろしいまでの伏線。前半に出てきた使えない道具たちが、後半、見事なまでに笑いと直結する。端正な本格ミステリーのよう。
  • 馬桜師匠、まずは自作の新作「ベビーシッター」。今風に「どっ」とわかせるものではなく、全編、くすくすと笑わせる。ハロワークに始まる導入が何といってもお見事です。「新作を聴いている」という意識が途中でなくなった。前の爺さんが爆睡していたのも御愛嬌。
  • 2席目は「星野屋」。様々な事情もあり、最近では滅多に聴けなくなってしまった噺。吾妻橋から川面を見下ろすお花。彼女が繋いである船に気づいているところは秀逸。ミステリー的にいえば、「フェア」。真相を見抜くチャンスはここにあったのだ。馬桜師匠も書いておられるが、サゲは優秀です。たまりません。
  • 中入り後は「唐茄子屋政談」。さげまで聴いたのは、初めてかも。勘当を食らう若旦那は数あれど、ここまで追い詰められるケースは珍しい。また親が冷淡で、息子を助けようとしていない。実際、息子がのたれ死んだら、お店をどうするつもりだったのだろう? 道に倒れた若旦那から、皆が唐茄子を買っていってあげる一シーンは感動的である。放蕩若旦那から因業大家まで、当時の風俗をしのばせる多くの人が登場。普通にやるとただの人情噺になってしまうので、そこここに笑いを挿入する馬桜師匠独特の間が楽しい。50分の高座があっという間であった。