怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「ラジコン爆弾を背負った刑事!」

  • 特捜最前線第62話「ラジコン爆弾を背負った刑事!」(脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


 平和会議出席のためハワード神父が来日する。過激派・黒の義勇軍は神父の命を狙い、爆弾テロを計画。
 神父の車を警護するのはSPの車両2台と、白バイ2台。車を前後に、白バイで左右に配置し不審車両の接近を防ぐ作戦だ。
 成田郊外で爆弾の爆破実験跡が発見される。神代は現状から、黒の義勇軍が爆弾を積んだ「リモコン車両」を突入させるつもりだと推理。警護車両2台の増援を要求する。
 そのころ、特命課員たちは黒の義勇軍のアジトを見張っていた。問題のアパートにまだメンバーの姿はない。まもなく、吉野が連絡もせず姿を消した。そして津上も。さらに二人を探しに行った紅林までが連絡を断つ。3人に何があったのか。現場へ向う船村と橘。だが、その場で船村までもが行方不明となってしまう。
 神父到着まであと25時間。神代は4人の捜索を橘に託す。たった一人、橘は現場へと向う。消えたメンバーたちに何が起きたのか。
 メンバーが一人一人消えていくという、もう頭がぐるぐる回るほどのサスペンス。こんなパターンは古今東西の刑事ものにもそうは無いだろう。一人、変装して現場に向う橘の格好良いこと。この時期の橘は無精髭もそり、眼光鋭い、「刑事の中の刑事」的な顔をしている。

  • ここまでの展開、実は開始後15分。橘が一人、黒の義勇軍を追い詰めていく話なのかとわくわくしていると、肩透かしである。橘も呆気無く捕まってしまうのだ。なぜメンバーたちが連絡もせず姿を消すことになったのか。真相は意外につまらない。だが、見せ場はここから。(真相を知るため、橘はわざと捕まった、そんな見方もできる)
  • 義勇軍は誘き寄せた者たちを一室に監禁していた。部屋には六人の男と一人の女が。
  • ここで面白いのは、義勇軍のメンバーは特命課刑事を探している。だが顔を知らない。冒頭、万一を考え、張り込みの際には、手帳や手錠を身につけるなという伏線が用意されている。これが効いてくるのだ。身分を証明するものがないから、誰が刑事なのか判らない。七人のうち、五人までが特命だと視聴者は判っている。知らないのは残りの人質2名と義勇軍メンバーのみ。五人はお互い初対面のふりを続ける。この駆け引きが長坂秀佳の真骨頂である。義勇軍は、特命課員が名乗り出ねば、人質を殺していくと宣言。部屋には盗聴器がしかけられており、迂闊に話もできない。さあ、どうする。
  • 黒の義勇軍の女団長には岡本麗。「はぐれ刑事」のレギュラーになることは誰も知らない。第167話「マニキュアをした銀行ギャング」で根岸季衣が演じた女テロリストの原型ともいえる役。長坂秀佳の中では同一人物として認識されていたのかもしれない。
  • ラスト、刑事の一人が本当に爆弾を背負うことになる。タイトルに偽りはない。