- 特捜最前線第118話「子供の消えた十字路!」(脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。
[ストーリー]
豊島区南大塚3丁目都電第4号踏切。午前11時、その前で自転車に乗った子供が車に撥ねられた。運転手は、子供を後部座席に乗せそのまま走り去る。目撃者22人。誰もが、運転手は子供を病院に運んだと思いこんでいた。
22人の目撃者の中に、船村刑事もいた。30分後、本部に戻った船村は、南大塚で轢き逃げ事件が起きたと知り、愕然となる。子供は病院には運ばれず、運転手はそのまま逃走したのだ。
現場で聞き込みを始める特命課。目撃者は船村を含め22人もいる。容疑車両はすぐに特定できるとの見込みだったが……。
証言A マンションの主婦 車種不明 ライトブルー 人相不明
証言B 作業員 車種不明 クリーム 30才前後
証言C 作業員 スカイライン 白 不明
証言D 作業員 車種不明 グレーか白 不明
証言E 通りがかりの主婦 ブルーバード ベージュ 痩せ形、長髪、眼鏡をかけていた
証言F 会社員 サニー クリーム サラリーマン風、眼鏡なし
証言G 主婦 車種不明 グレー 角刈り、学生風、27-28才、眼鏡なし
証言H 角の主人 車種不明 アイボリー スポーツマンタイプ、32、3歳目撃証言はことごとく食い違う。22人目の目撃者船村でさえ、正確な記憶はない。
12時半、病院より連絡。それらしい子供を診療したのこと。だが、医師が離れた隙に、子供は連れの男と共に再び姿を消してしまう。医師によれば、子供は重傷。放置しておけば、3時間から5時間が限度である。タイムリミットはあとわずか。
吉野、桜井組は、国道254沿いの公衆電話でそれらしい車を見たとの証言を得る。
滝は踏切前近くで新たな目撃者を確保。車のナンバーの前部、「練摩 55 ち」が判明。特命課員は、該当する車の持ち主に片っ端から電話をかける。だが、時刻は午後3時。それでは間に合わない。
船村は再び現場に立つ。自分の記憶を何とか呼び覚まそうと、必死に考える。彼の記憶にあるものは何か。少年を救うことはできるのか。
- 数ある長坂脚本の中でも、「新宿ナイト・イン・フィーバー」を別格とすれば、「死刑執行0秒前」「マニキュアをした銀行ギャング」と並びマイベストを飾る作品。初めて見たときのショックは今だ忘れられず。事件発生時期が真夏であるという設定が見事。他の季節では、これほどの緊迫感はでない。
- 実は半分が犯人サイドの描写である。犯人は一戸建て住宅の頭金を払いにいく途中、子供を撥ねてしまったのだ。自宅で報告を待つ妻と3人の子供の様子など、切なさ炸裂。反面、瀕死の子供をスクラップ場に隠し、逃げてしまう男の心情も、理解せざるを得ない展開。
- 犯人を極悪人にしていない点が、船村の説得場面で生きてくる。スクラップ場に駆けこみ、子供を隠した車が無くなっていたときの泥水演技は素晴らしいの一言。これもまた、夏なればこそ。
- 今回は船村を囲む、ほぼ全員が何らかの活躍を見せる。特に、新たな目撃者を見つけだす滝の働きはお見事。エリート揃いの特命課にあって、あれは滝にしかできない。活躍の少ない滝が輝く、一シーン。
- 早く「長坂秀佳術」が読みたい。