怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と消えた聖女・恐怖の48時間!

  • 特捜最前線第244話「消えた聖女・恐怖の48時間! (脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


ストーリー
1月19日国際的慈善家であるマザーラーサが来日。ノーベル平和賞、ローマ法皇からは「聖なる母」の称号を授けられるなど、まさに聖女として尊敬される彼女。だが、そんなラーサも特殊な病気におかされ、体内にヘパリンという薬を補充するポンプをうめこんでいた。特命課はマザーラーサの警護の特別任務に就く。
12:45
 マザーラーサ東京国際空港に到着。しかしラーサは記者会見をすっぽかし空港から姿を消す。彼女は同じ病に苦しむ少女上岡まり子をおしのびで訪問しようとしていたのだ。ラーサの車は特命課をふりきって走り去る。
14:58
 マザーラーサの乗った車を発見。だが車内にマザーラーサの姿はなし。麻酔薬を使って拉致された可能性。
15:30
 上岡まり子宅。現場状況から、誘拐犯は待ち伏せをしていたらしい。つまり、ラーサのおしのびを知っていた。特命課は情報がまり子の家族から漏れたと疑うが……
15:55
 東都大学病院。マザーラーサの病状は深刻。補充するヘパリンは16:00で切れる。ヘパリンなしで彼女が生きられる限度は24時間。
 犯人から連絡。ラーサと引き換えに3億円要求。取引相手には特命課を指定。
20:00
 3億円は切手で用意しろと要求。明治7年サクラ切手は一枚500万円。最低500万の切手で3億円分、用意せよ。
21:30
 日本郵趣協会。サクラ切手は日本に12枚しかない。特命課課員は仙台から大阪に散らばる所有者を説得。切手を揃える。それでも3億円には足りない。残りは明治8年タマヨ切手で代用。一枚3000万円で北海道の男が8枚持っている。
 犯人から連絡。だが、タマヨ切手4枚は既にアメリカ人に売却済み。身代金に1億2千万足りない。
 日本郵趣協会より連絡。一枚1億2000万という切手の存在が明らかに。五百文逆さ刷り。だが所有者は手放そうとしない。船村たちの説得が続く。
 犯人はなぜ、切手を指定したのか。切手はセロハンで包み、二つに分けろとの指示。それはなぜか。取引開始は午前11時。タイムリミットまで5時間。マザーラーサの命は……?

  • ここまで長坂節全開なのは、ひさしぶりではなかろうか。ほぼ全員に見せ場があり、最低一回はナレーション担当。
  • 犯人は小粒ながら、知能犯。プロとプロの戦いが炸裂する。中でも神代の格好良さはまさに神。
  • 一番重要なのは、犯人側のドラマを一切見せていないこと。そして、人質の描写も最低限。つまり見せ場のほとんどは、解決に向けてばく進するプロ集団の特命課でしめられている。こういう脚本を書ける人は、やはり長坂秀佳だけだと思う。
  • たいていの場合、未熟な犯人の内輪もめとか、監禁された人質の愁嘆場でシーンを繋げようとする。つまり、その方が楽だからだ。今回の長坂脚本はそれを堂々と拒否。特命課の動きのみを淡々と追っていく。
  • 長坂秀佳の世界に凡人はいらない。プロとプロ、天才と天才がぶつかるからこそ、長坂秀佳は面白い。人が死ぬことで泣きをさそったり、展開に困ったから裏切り者をだしたり、未熟なものの成長物語にしたり、そんなのは無能なヤツのすることで、やはりこの時代の長坂秀佳は偉大なのである。