怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「東京殺人ゲーム地図!」

  • 特捜最前線第186話「東京殺人ゲーム地図!」(脚本・長坂秀佳 監督・田中秀夫)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。凄まじい話で、特捜・長坂脚本の中でもベスト10に入るであろう。


[ストーリー]
10月3日、要町で女性が襲われ重傷を負った。犯人はバイクに乗っており、被害者を轢いた後、服のボタンをはぎとっていた。10月5日、神谷町で男性が襲われた。犯人はやはりバイクに乗っており、今度はナイフで服のボタンをはぎとっていた。その第2の犯行を予言していた男がいた。画家であり犯罪心理学者でもある鹿沼である。彼は元警視庁幹部。現行警察の無能を訴え、非人道的捜査でクビになった男だ。特命課の叶刑事は彼の下で働いたこともあり、その奇妙な予言に関心を持つ。鹿沼は叶に対し、警察は犯人を逮捕できないと宣言。マスコミは鹿沼対特命の図式を描きはじめる。
 そんな中、第3の犯行が。10月9日、港区で女性が襲われた。被害者は気を失った後、犯人によって数メートル移動されている。この移動に意味はあるのか? 10月10日白昼、渋谷区で男性が襲われる。すべてにおいて、後手後手に回る特命。テレビでは鹿沼が次の犯行を予想。すべて的中させていた。これは予言か推理か。彼を犯人と疑う叶は鹿沼を尾行。だが、その間にも犯行はつづく。皮肉にも、彼のアリバイを叶自身が証明することに。
 10月16日、文京区で女
 10月17日 北区で男
 10月21日 新宿区で女
 マスコミを利用した鹿沼の警察攻撃に、元警視庁幹部である宗谷が論戦を挑む。その席上、鹿沼は「拳銃が奪われ、被害者が出る」と予想。
 10月24日 中野区で男。被害者は男性警察官。犯人は拳銃を奪っていった。
 そして、白金台で女性への発砲事件が発生。使用されたのは、盗まれた拳銃。すべては鹿沼の予言通り。拳銃を盗まれた警官はそのことを苦に自殺する。
 被害者たちに関連性は皆無。犯行の目的も不明。捜査は遅々として進まない。続発する犯罪に、特命は窮地へと追い込まれていく。
 10月27日、大井町で少年が射殺される。翌28日には女性が発砲により負傷、翌29日には目黒区で男性射殺。
 鹿沼への対抗心から必死で捜査を続ける叶。やがて彼は、犯行の意外な関連性を見い出す。犯人の目的は……?

  • これが放映された頃には「何てバカなことを考えるのだろう」とあきれられたに違いない。現代の目で見ると、別にバカでも何でもない。こういう犯罪を仕掛ける奴は実際にいるのではないか。
  • ミステリー的に見て、これは明らかな新本格。それも極上の新本格だと思う。いわゆる「本格」しかなかった時代には、アクロバティックすぎる着想に、ただあきれられるだけだったろう。
  • 番組開始後27分で重要なヒントが与えられる。だがそれは確信犯。それから2分後には犯行動機が視聴者にも明かされる。その時点より、焦点は推理から駆け引きに移る。大滝秀治演じる船村刑事出馬からはもう圧巻の一言。
  • これはもう天才が書いたもの。そうとしか言えない。
  • で、これが放送された2週間後には、これまた傑作の「プラットホーム転落死事件!」を書いている。長坂秀佳恐るべし。