- 「特捜最前線」第251話午後10時13分の完全犯罪! (脚本・長坂秀佳 監督・松尾昭典)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。
ストーリー
少女売春疑惑で辞職に追いこまれた元国会議員の富岡。特命課桜井は、彼が強請りを働いているという密告電話を受け、身辺を調査していた。だが、富岡は桜井の眼前で射殺される。現場は富岡行きつけのクラブ。電話で会話中に狙撃されたのだ。犯人は自らクラブに電話をかけて富岡を呼び出し、曇りガラス、カーテンごしに狙撃、四発発射、うち三発を命中させていた。
通報を受け、管轄である東新宿署の捜査員がやって来る。指揮をとるのは、副署長の浦部。彼は周辺の聞込捜査を徹底させ、すぐさま目撃者三名を見つけだす。
三人の目撃者から、犯人は革ジャンを着ていたことが判明。
付近の電柱には犯人が車で逃走した際、接触したと思われる塗料片が付着していた。割り出された車種はシルバー・グレーのフェアレディーZ。
犯行直後、富岡の事務所が荒らされ、強請りの台帳が一ページ分破り取られ流しで燃やされていた。わずかな燃え残りから読み取れたのは、「S」の文字。
以上の事実から、浦部は重要容疑者として作家の佐倉を連行。取調べを開始する。
一方桜井は、あまりに的中する浦部の勘に疑問を持つ。浦部こそが真犯人ではないのか。
だが、所轄の捜査は着々と進んでいく。
目撃者の証言で作成した似顔絵は佐倉と生き写し。彼はシルバーグレーのフェアレディを所持している。事件当夜のアリバイなし。桜井は浦部と対決。疑問をぶつける。桜井の疑問ー犯人はカーテンごしに富岡を射殺。佐倉はクラブの間取りを知らない。行きつけの者でなければ犯行は不可能。
浦部の解答ー問題のクラブは間取り入りで雑誌に紹介されていた。行きつけでなくとも犯行は可能。桜井の疑問ー犯人は銃の扱いに慣れている。自衛隊、警察関係者を当たるべき。
浦部の解答ー佐倉はガンマニア。アメリカで実弾射撃を何度もやっている。まもなく、凶器と革ジャンが発見される。ここでも当たる浦部の勘。佐倉の容疑はますます濃くなる。
浦部はかって神代と特命課課長の座を争ったほどの男。簡単にしっぽは出さない。
もし浦部が犯人だとすれば、目撃者は、なぜ佐倉を犯人と言ったのか。事件は浦部対特命課の様相を見せ始める。
浦部を追い詰める証拠は発見されるのか?
- 犯人が先に判っている「コロンボ」形で進むエピソード。犯人浦部を演じる田口計が出色。
- 捜査官が犯人ということで、メインは「濡れ衣」。細々したところまで綿密に計画された濡れ衣計画殺人である。物理面、心理面、とにかく膨大な小ネタが盛りこまれており、画面から目が離せなくなる。
- 電話口に被害者を呼び出すまでのトリックも実に丁寧に描写。電話器のどこに立つか、人によって癖があるとか、射殺の瞬間をビデオが撮っていたとか。解決に直接関係しなくとも、こういう点を丁寧にやってくれるとうれしくなる。
- 解決に向けてはこれまた二重三重に仕掛けてくるのだが、印象的なのは「読唇術」。うわぁ、これがあったのかぁとひっくりかえりそうになった。正直、詰めの証拠とかよりも、はるかに衝撃だった。
- 主役は桜井でスタートするが、だんだんと特命課全員出動の状態となり、中盤で橘が心憎い大活躍を見せる。ただし、それを意識的に画面で見せない。わざわざ叶の口から説明させる。桜井と橘というツートップの関係を、恐らくは愛していた長坂秀佳らしいこだわりだと思った。
- いつもながらの長坂節炸裂ながら、今回の見どころは「密度」だと思う。本当にすごいミステリードラマって、瞬きするのももどかしく感じる。
- このエピソードはいずれDVDに入れないとねぇ。東映さん。