怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳とリミット1.5秒!

  • 「特捜最前線」 第287話 リミット1.5秒! (原案・葛西裕 脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

 

雨の夜、若い女性が右足の不自由な男に拉致された。現場を目撃した交番の警官が追跡するも、犯人は女性を連れたまま車で逃走する。現場に残されていたのは、女性の持っていた傘。そこには「72839」の文字が。
そのころ、特命課に残る桜井の許には、露子と名乗る女から助けを求める電話が。指定場所に向かった桜井だが、謎の男に襲われ、意識を失ってしまう。桜井行方不明の報告を受け、捜査を開始する特命課。桜井が残したメモを頼りに、拉致現場を特定。そこにはやはり、「72839」の文字が。同じ夜に起きた、二つの拉致事件。その関係は?
手がかりが掴めぬまま24時間が経過。そんな中、第三の事件が。道ばたで発見された老人の死体。目撃者によれば、右足の不自由な男と揉み合ううち、はずみで道路に飛びだし、トラックに轢かれたという。被害者のポケットのハンカチには、「72839」の走り書きが。
三つの事件を結びつけるものは何か。拉致された女性、桜井はどこにいるのか。
橘たちの捜査により、第三の被害者の身元が判明する。老人は元本庁警務部人事第一課長兵藤警視長であった。さらに、五年前に病死した迫水一係長には露子という娘が。二人が現役であった八年前、桜井も部下として本庁に在籍していた。
彼ら三人を結びつける一つの事件。桜井の同期、唐沢警部による警官誤射事件がクローズアップされる。誘拐事件を内偵中であった唐沢警部は、犯人一味に捕らえられ、人質の女性ともども、激しい拷問を加えられた。桜井たちが犯人のアジトを特定、踏みこもうとしたとき、瀕死の唐沢は近づいてくる制服警官を犯人と誤認、とっさの判断で二人を射殺していたのだ。彼は懲罰委員会にかけられ、二年の停職。彼は桜井が自分に不利な証言をしたと信じこみ、そのまま警視庁を去ったのだ。
三つの事件に唐沢が絡んでいることは間違いない。彼をマークする特命課だが、桜井たちを拉致した真意は掴めない。監禁された桜井たちの運命は? 唐沢の目的とは何なのか?

 

  • このエピソードに原案があったことは初めて知った。
  • この手のドラマを見慣れていれば、唐沢の目的はすぐに判る。だが、それを破綻なく実現させるための難易度は限りなく高い。私は見ながらあれこれ考えたが、上手い手段を見つけられなかった。中盤、実にアクロバットな方法で、それが実現に近づいていくと、あまりの感動にくらくらした。そうか、その手があったのか。このアイディアが原案者によるものか長坂氏によるものかは判らないけれど、見事だと思う。
  • 現実的でないとか、都合良すぎるというのは野暮であり、ここはサスペンスを大いに楽しむべきだろう。山場はまさに「1.5秒間」に集約されている。この一瞬のためにすべてが費やされているのだから、贅沢な作りである。
  • 犯人が粗暴犯なのか知能犯なのか、その印象が一変する仕掛けも用意されており、この辺はもう、本格ミステリー。
  • ジェットコースター的にサスペンスの連鎖で盛り上げるのではなく、ある一点に向けて、これでもかと状況を悪化させていく。物語作りの新しい側面を見せていただいた。しかし、これは一度きりの荒技だなぁ。