怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

特捜最前線第468話「追跡・声紋・105937!」の思い出

  • 私が特捜最前線にはまったのは、中学三年のころ、午後三時からの再放送で、たまたま第351話「津上刑事の遺言!」を見たからだった。あまりの面白さにふらふらとなり、翌日から毎日見るようになった。当然、本放送も継続中であったので、そっちも並行して見始めた。吉野刑事の殉職は記憶にないので、新メンバーになってからなのは間違いない。恐らく450話前後だったろう。
  • 先般の日記にも書いたのだが、20年以上前に見た特捜最前線の中で、いまだ頭の隅にこびりついているシーンが幾つかある。例えば、先日の日記にも書いた第467話「死体彷徨・水の殺人トリック」がそれだ。「異様に格好良い橘刑事のラストシーン」だけが記憶に残り、あとは霧の彼方……。今回の放送で長年のモヤモヤがついに晴れたのだった。
  • 実は467話以外にも、記憶に残っているワンシーンがあと二つある。一つは先般も書いた、「雨の中で犬養刑事が土下座している」もの(情報を寄せていただいたのにまだ確認できていません。ごめんなさい←私信)。そしてもう一つが、「街頭のビデオに入っていた犯人と覚しき声が手がかりとなり誘拐犯が逮捕される」というものだった。犯人の声は「気をつけろ、どこみて歩いてんだ」。そこまでは覚えていたが、タイトルも何も判らない。
  • それから20年。ついにそのエピソードが第468話であることを突き止めた。まさか、「死体彷徨」の次のエピソードだったとはなぁ。そしてこれもまた、長坂脚本でなかったんだなぁ。


(ネタにふれています)
宝石店の社長永松の一人息子健一が何者かに誘拐された。身代金は3000万円。一度は警察に通報した永松だったが、息子の安否を気遣い、それ以上の介入を拒否、一人で身代金受け渡しの現場に向かった。特命は永松を密かに尾行、現れた犯人を確保しようとするが、杉のミスで失敗、さらに桜井が腕に傷を負う。犯人は逃走し以後の連絡が途絶える。永松の話によれば、健一は血液が固まりにくい血小板障害であり、ごく小さな傷でも命取りになってしまうという。特命課必死の捜索にもかかわらず、その行方は知れない。
そんなとき、杉と桜井は道玄坂の街頭ビデオで重要な手がかりを掴む。ビデオの中に通行人の声が偶然入っており、それが脅迫電話の声とそっくりなのだ。ビデオを押収した桜井たちは声紋の鑑定を依頼。声が犯人のものと同一であることを突き止める。
特命課は問題の声が入った瞬間のビデオ画像を解析。画面に映っているA-Fまで六人の男性の中に犯人がいると推理する。だが、お互い見ず知らずの通行人ばかり。しかも数人は背中を向けており、顔を確認することができない。
最初の手がかりは、A、Bの学生風の若い男。一人がクレープを食べていたことから店を特定。そこから大学が判明する。二人は犯人ではなかったが、背中を見せているCを特定する。Cは「こなかけおじさん」として道玄坂界隈では有名な男だった。一方Cは、Dと一緒にいる女性をホテルで見かけたと証言。ホテルから女性が乗ったタクシーを突き止め、さらに運転手から団地近くで下りたとの情報を得る。団地での聞きこみから、女性の身元が判明。Dは彼女と不倫(?)関係にある省庁勤めの男であった。男は茨木生まれであり、独特のイントネーションが犯人のものと酷似している。果たして、犯人はDなのか。
そのころ、運河からハンカチ入りの瓶が回収される。中のハンカチには血で「たすけて」と書かれていた。ハンカチの持ち主は永松健一。健一は監禁場所で怪我をして、血を流している……。
事態が緊迫するなか、Dと犯人の声紋は不一致。捜査は再び暗礁に。
そんな中、靴磨きがFの身元について証言。彼は画家であり、現在、入院中であるという。Fは背中を向けているEの顔を見たと証言。似顔絵を描き始めるが、完成させる前に心臓発作で危篤状態に。
万策尽きた特命課。犯人を見つけだし、少年を救うことができるのか。

  • 落ち着いて見れば、街頭ビデオに犯人の声が入っているという、宇宙規模の偶然はあまりに荒唐無稽であったり、団地に行くと偶然一階のベランダに奥さんがいたり、とけっこう無茶苦茶な部分もある。
  • 一番の魅力は、「一枚の画像から六人の男を突き止める」という怒濤のジェットコースターであり、その部分はワクワクのドキドキなのだが、さすがにFの男が心臓発作を起こしたところはギャグにしか見えず、大笑いしてしまった。
  • 犯人の面が割れてから、黙秘、自供までは家族愛ムンムンの演歌になるわけだが、このあたりはもう少しクールにして欲しかったなぁという印象。桜井が妻や子に会いに行く……のはいいとして、死に瀕しているタイムサスペンスとどう考えても時間軸が合わない気もする(桜井が超高速で生きているようにしか見えない)。叶刑事の役割がコロコロ変わったりとそんな混乱もあって、「ここ、長坂秀佳だったらもっと上手くやるのになぁ」なんてことをつい考えてしまったのも事実。
  • とはいえ、全体通してのテンションは恐ろしいものがあり、これぞ特捜。20年前、これに惚れた自分を恥じる気持ちは毛頭ない。私の中では「マニキュアをした銀行ギャング」と並び、「世評はいまひとつだけれど、俺の名かではベスト級」の一本。DVDへの収録を強く望む。
  • 私を特捜好きにしたのは「津上刑事の遺言」だと思っていたが、こうして見ると、本当に特捜を遺伝子に組みこむきっかけとなったのは、むしろ、467話、468話かもしれない。となれば、私の人生を変えた二本ということになるのか。