怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と地下鉄・連続殺人事件!

  • 特捜最前線DVDBOX Vol.4に収録されていた、第169話 地下鉄・連続殺人事件! (脚本・長坂秀佳 監督・宮越澄)を見て、あまりの面白さにふらふらとなった。

 

6月15日、地下鉄銀座駅ホームから、男が突き落とされ死亡した。被害者はお菓子屋の主人、西村敬介。手には裏面を赤く塗りつぶした切符を握りしめていた。
6月16日、地下鉄日本橋駅のホームで、駐車場経営、松本とみが刺身包丁で刺殺された。手には裏面を赤く塗りつぶした切符。
西村ととみの間に繋がりはなく、特命課による捜査も進まない。そんな中、第三の殺人が。
6月20日、地下鉄虎ノ門駅ホームで、梶田善兵が刺殺された。手には切符が二枚。
犯人の目的は何なのか。なぜ、地下鉄のホームなのか。切符の意味は。裏が赤く塗られているのはなぜか。
まもなく、紅林の調べで、被害者三人の繋がりが明らかとなる。三人は一年前に起きた交通事故の目撃証人だった。事故は第一の被害者、西村の店付近で起きた。道に絵を描いていた上村冬子が突っこんできたバイクにはねられ即死した。警察の調べで、三人はバイクを運転していた中岡に有利な証言を行い、結局、中岡には執行猶予付き判決がだされていた。
特命課の滝刑事は、冬子の写真を見て愕然とする。彼は冬子の母蛍子と面識があった。第一の被害者、西村敬介宅を訪ねた折、店付近の路上に花を供えていた女性を目撃。事件関係者と早合点した滝は、彼女を連行しようとしたのだ。
冬子が死んだとき、蛍子は半狂乱となり、周囲にいた大人たちに恨み事を述べていた。さらに、中岡は有力者の息子。三人の目撃者は買収された可能もある。彼女なら、三人を殺す十分な動機を持っている。彼女を第一容疑者として捜査を進める特命だが、蛍子を個人的に知る滝は、それに納得できない。
6月21日、地下鉄神保町で瓜生保男が刺殺された。手には切符が。
特命の捜査に対し、蛍子はアリバイを主張。瓜生が殺害されたとき、公園で別居中の夫と会っていたと証言する。
冬子の父親である上村達男。新たな容疑者の登場に、特命課はさらに捜査の手を進めていく。ここでも滝は、達男を犯人とは信じきれないでいた。蛍子、達男の無実を証明するため、滝は刑事生命をかけて捜査に挑む。謎の地下鉄連続殺人の真相は……?

 

  • 「バカミス」と言われるものが嫌いではない。ただ、どういう作品を「バカミス」と呼ぶかという「定義」については、昨今の風潮に疑問を持っている。私が考える「バカミス」とは、このエピソードのようなものだ。これは最上級の讃辞であり、「バカミス」ゆえの破壊力に度肝を抜かれ、感動し、驚きの愉悦にひたる幸せを、私はいましみじみと感じている。
  • 本作は滝刑事の引退作。滝はひょんなことから特命課に加入した変わり種であり、エリートでも優秀でもない、いわゆる凡人だ。その凡人がいよいよ特命を去るわけであるから、ふつうに考えれば、「凡人であった刑事が切磋琢磨によってついに優秀な刑事になりました」という展開を考える。ところが、ここでも長坂節は炸裂し、滝は凡人のまま特命を去る。彼を見送るのは神代だけであり、他の課員は顔も見せない。滝の「凡人」を最後まで押し通した長坂秀佳に拍手。
  • 「凡人で通す」という意志は、エピソード内を太く貫いていて、通常の刑事ドラマでは考えられない、「間違った信念を持ち、間違った推理を行っている刑事が堂々と主役を張る」という展開を見せる。そしてだからこその「バカミス」一発炸裂!! 一生、忘れられない一本だ。特命ベスト十傑入り。