怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

相棒にフラフラ

  • 恒例となりつつある「相棒」スペシャルを観る。傑作だ! ど級の面白さだった!! ふらふらだ!!!

都市再開発推進派の議員、富永がカウントダウンパーティを開いた。富永はあちこちから脅迫を受けており、数日前には自宅が放火されていた。小野田の命令で彼の警備をすることになった杉下と亀山の二人。
富永には私設ボディーガードがいた。元警察官の辰巳カエデ。彼女と富永はパーティーの席上、婚約を発表することになっていた。カエデには離婚歴があり、耳の不自由な娘ハルカがいる。そのハルカが、パーティー会場から誘拐された。カエデの許にかかる脅迫電話。犯人は左翼過激派「赤いカナリア」の梶と名乗った。要求は富永の射殺。午前零時までに実行されない場合、娘のカエデは時限爆弾で死ぬことになる。
会場に戻ったカエデは富永に発砲。だが、杉下によって未遂に。
ウエイトレスを人質にろう城することとなったカエデ。事件の指揮に当たる大河内監察官は、彼女の射殺を命じる。
カエデの行動から真実を見抜いた杉下は、彼女を救うために奔走する。タイムリミットは午前零時。誘拐されたハルカはどこか、立てこもるカエデの運命は……? ホテルを舞台にした三時間の攻防戦。

  • 「相棒5」はつまらんと散々、愚痴っていた私だが、反省。この一本で全部帳消し。とにかく素晴らしい。
  • 2時間半のイベントでありながら、あえて閉鎖空間を選ぶ度胸の良さ。現場における濃密な人間関係、タイムリミットサスペンスの面白さをふんだんに盛りこんでいる。まあ、「24」を意識したのだろうが、一見、行き当たりばったりに見える脚本、実は周到に練られている。
  • オープニングに秘められた仕掛けは残念ながらバレバレなのだが、その心意気良し。
  • 意地悪な見方をすれば、今回は「相棒」にあって「相棒」にあらず。杉下の役割は現場指揮官であり、亀山活躍の場がない。結末を考えれば、杉下は敗北しているし。でも、そんなことはどうでも良いのです。とにかく、いたるところ、凄いんだから。昨年のスペシャル、最初の一時間強は、「相棒」とは関係なかった。誘拐で大風呂敷を広げておいて、後半から一気に、「相棒」となる。今年はそれをさらに進化させ、一本のサスペンス巨編にしてしまった。ただただ平伏するのみ。
  • 見どころがブロックごとに考えられていて、素晴らしいまとまり具合。一つ一つ検証したいが、ねたばれになってしまうので割愛。懐中電灯の杉下は涙ものの格好良さとだけ言っておく。あ、ひさびさに出た「いっちゃった犯人」も素敵。
  • 「親権」に関するオチは実に優しく美しく、ミステリーはかくありたいものだと実感。ミステリーは本来、優しく美しいものなのだ。
  • 古沢良太の脚本にバンザーイ、バンザーイ。別次元に進化した「相棒」にバンザーイ。
  • 果たしてこれを超えるドラマを、今年観ることはできるのか。