怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

CSI : マイアミ  カルトの狂気

Muho2008-06-06

レストランで男の死体が発見された。現場は店のトイレ。被害者は店の従業員、フィリップ・マルルーニだった。遺体は便器にかがみ込む格好で、衣服は裂け靴ははじけ飛んでいる。状況は落雷による死を示していた。だが落雷の経路は不明。事故か殺人か。まもなく、落雷の瞬間、被害者が携帯電話で通話していたことが判る。相手は食餌療法の提唱者、ドクター・キルパル・シンハルマ。かってはシンハルマの忠実な部下であったフィリップだが、最近ではその教えに疑問を持ち、食餌療法の規律を破っていた疑いがある。そんな彼が、シンハルマとの会話中、落雷を受けて死んだ。これは天罰か、それとも、シンハルマが仕組んだ殺人か。証拠を掴むべく、ホレイショ・ケイン率いる、マイアミ・デイト群警察CSIメンバーが捜査に当たる。ラスベガス編につづいて、マイアミ編も発売となったノベライズ。喜ばしいことだ。ノベライズといっても、作者のドン・コルテスはオリジナル小説を発表している、キャリアある作家であり、この本も、キャラクターだけを借りた完全オリジナル小説になっている。テレビと比べての違和感もほとんどない。ウルフは「オタク」ということでロケットを、カリーは銃を、やや影が薄いデルコは麻薬関係を……とそれぞれ捜査過程がしっかりと描かれていき、それが一つに結びつく。ところどころには、ニヤリとさせるマニアックなネタも散りばめられていて、著者の圧倒的ともいえる意気込みにとまどってしまうほどだ。ノベライズにどうしてここまでする!? ←誉め言葉。事件はカルト化したグループとホレイショの激闘、トレーラーが爆発したりと実にマイアミらしい。とはいえ、捜査あくまで科学捜査が建前であるから、意味もよく判らない用語がポンポン並び、果たしてここを読む必要があるのかしら? というストレスもなくはない。それにしても、翻訳作業は大変だったと思う。ちなみに、鎌田三平氏の訳はこれまた見事なまでに「CSI : マイアミ」で、角川が版元ということもあるけれど、原典を損なわない、見事な仕事だと心底、感心した。描き方はまったく違うけれど、事件そのものは、「新本格」的で、その手のものが好きな人にはお勧め……かもしれない。CSIが好きな人には必携の書というべきか。