怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

平成ガメラと川北特撮の融合

Muho2008-07-07

「MM9」(山本弘)
実は出てすぐに読み終えていたのだけれど、ちょっと仕事の都合などがあり再読。うっかりミステリーのようなフリして出ているが、まぎれもないSF怪獣小説。それも傑作と呼んでいいと思う。日本を襲う怪獣災害に対処するため結成された、気象庁特異生物対策部の面々。彼らが遭遇した5体の怪獣を巡る物語だ。「怪獣映画」の組み立てでもっとも重要なのは、「怪獣が出現するまでをいかに描くか」だと思う。「ゴジラ」は大戸島の伝説と絡めて語ることで、ゴジラの全身像を最後まで隠し、品川上陸のクライマックスに繋げた。怪獣そのものをださず、怪獣の特性によって生じる特殊な事象を克明に描き、それがサスペンスになっていけば、怪獣ものとして半分は成功したようなものだろう。昨今のように、「始まって三分で怪獣を出せ」では、ロクなものができるはずもない。「MM9」は「怪獣出現」までの重要性を的確に突いていて、マニアとしては気持ちが良い。再読してしみじみ思ったのは、「平成ガメラの心意気」と「良くも悪くも川北特撮」の双方が渾然一体となった、何とも味のある怪獣ストーリーだなぁということ。と同時に、「SF」と「怪獣」を並立させる難しさも感じた。怪獣ものはSFだと断言できるけれど、実際には怪獣ものをSFとして捉えていない自分がいる。日本の特撮映画に立脚した怪獣小説を書く場合、そこが大きな壁となるように思う。