怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

男たちの介護

  • 深夜にやっていたドキュメント「男の介護」を見る。認知症を発症している82歳の母親の介護をする、独身50代の男性に密着。母親は深夜徘徊までいっており、かなり悲惨な状態。一人では便所にも行けず、オムツを着用。男性は地元の議員であるが、介護のため次期選挙への出馬を止めた。密着している一年弱の間に、母親は入院して自分でオムツがはけなくなり、認知症が重篤化して、歩行するのも嫌がるようになった。でも、議員を辞めたため、年収は落ちこみ、介護にお金をかけることができない。
  • 救いがあるようなまとめ方などもあり、底の浅い番組だと思ったけれど、「母親を殺したら、楽になる」と思ったことを堂々と語った点は評価したい。
  • 「介護と殺人は紙一重だねぇ」は名言。
  • でも、40前半の男が母親を介護に疲れたからと殺したら、どうだろう。世間はやっぱり同情してくれるのだろうか。
  • 番組は「男の介護は大変だ」をテーマにしていて、私が一番懸念する、「介護離職」についてもしっかり描いていた。でも、そうしたシンポジウムに来ているのは、50代後半から60代の人ばかり。そうじゃないたろうに。これから介護は低年齢化してくるんだよ。30代、40代で介護をさせられて、人生踏みにじられている人たちはどうすればいいのよ。いいこと何もなく人生、終わってしまう。介護をしている者とそうでない者の格差も大きくなり、不公平感もすさまじい。世間的にはまだそこまで目が向いてないのかなぁ。
  • 番組のラストは「こんな生活がいつまて続くんだろう? 介護に終わりは見えない」だった。
  • これは真実を見事に突いている。ただ、一番の問題は「介護が終わった後」だということに気づいているんだろうか。議員辞めてまで介護している男性だけど、母親が死んだ後、この人には何が残るのだろう。もう何もないんじゃないだろうか。
  • さらに言えば、40代で介護が終わって放り出された人たちは、それからどうしていけばいいのだろう。介護をしていなかった人に比べれば、あらゆる点で遅れをとっているはずだ。介護に時間をとられ、仕事にも全力投球できなかったはずだ。介護費用がかかり、生活も苦しかっただろうし、貯金もないだろう。なのに、その人の人生はまだまだ続く。
  • 介護と殺人は紙一重だけれど、それは介護者が被介護者を殺すことばかりを言っているわけではない。被介護者は間接的に介護者を殺しているんじゃないか……。そんなこんなをあれこれ思ってしまい、ああ、こんな番組、見なければよかったと思ったけど、もう遅い。