怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

「女未決囚408号の告白!」

  • 「女未決囚408号の告白!」(脚本・長坂秀佳、監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらになった。


夫を刺殺したとして、関東拘置所に拘留中の被疑者、薬研真沙子。裁判まであと六日という段階になってなお、特命課桜井は、彼女への面会を続けていた。彼女は金欲しさから、土地ブローカーであった夫を刺殺した。凶器として使用したのは、台所にあった刺身包丁。逮捕された真沙子は殺害後、油をかけて燃やそうとしたと証言。特命課の捜査によっても、真沙子犯人は確定的だった。真沙子は前科二犯。彼女の犯行を疑う要素は皆無に見えた。
だが桜井は、解決しきれていない二つの疑問にこだわり続ける。
疑問1は、凶器についていた指紋。指紋には右第五指と左第二指の二指が欠損していた。
疑問2は、「メリーさんの羊」の証言。犯行直後、真沙子は放心状態となって隣に住む妹宅へ。そこで、いずこかに電話をかけていた。居合わせた三歳のさとみの証言によれば、「電話がメリーさんの羊を歌った」という。
疑問を解消できない桜井は、真沙子への面会を続ける。だが、桜井からタバコを奪うばかりで、質問には答えない。
真沙子の家族関係を洗い始める桜井だが、身内からの証言は、真沙子の不利になるものばかりだった。実の母は真沙子を憎んでおり、真沙子もまた母親を憎んでいた。母親に向かってナイフを突きつけたこともあったらしい。
刻々と迫る裁判。
桜井は二つの疑問を解決することができるのか。
真沙子は本当に夫を殺害したのか。では、その動機はいったい何なのか。
「悪女」と言われた、薬研真沙子の本当の姿とは。

  • これがまた、手のつけられない傑作というか、一部の隙もないというか、見た後、しばらく言葉もでず。
  • 自分はまだまだなのだと、あらためて思い知って、落ち込みましたですよ。
  • ちょっとネタバレとなりそうなのだが、恐ろしいのは桜井のによる捜査の前と後では、大きな変化が起きないということ。ミステリーとして、これは異色。にも関わらず、どんでん返しがあり、驚きがあり、トリックがあり、サスペンスがあるわけで、それらが一体となって、ラストシーンの感動に繋がる。全部、計算してやっていたわけだ。恐ろしい。
  • 今回は演出面との相乗効果もあった。真沙子と母親の対比や「メリーさんの羊」の見せ方などは、脚本上の意図をしっかりと理解していて完璧。
  • 傑作傑作と聞いてはいたが、実は初見。「特捜最前線」DVD BOXのVol.10にギリギリ収録。よかったよかった。
  • ちなみに、Vol.10には、「カナリアを飼う悪徳刑事!」も収録。森次晃嗣を世界遺産にしたくなるくらいの傑作だとーー個人的には思っている。