メンタルクリニックの特別室(?)で男が射殺されていた。男はクリニックの院長で心理学者、アレンビーのマネージャー兼愛人。被害者の足取りを追うコロンボは、彼がその夜、黒いドレスの娼婦と一緒であったことを突き止める。現場に残された煙草、目撃者、犯人はその娼婦であると思われる。だが、彼女の身元は杳として知れない。幻の第一容疑者はどこに消えたのか。男女の愛憎が動機となる、80年代らしいエピソード。旧シリーズの動機は、多くが金銭目的であり、愛憎泥沼劇というのは、意外と少なかったように思う。圧巻は犯人である心理学者が、自ら変身願望に取りつかれてしまうくだり。絶対的証拠品を挟んでコロンボとやり取りを交わす展開など、雰囲気としては実に楽しめる。難を言えば、証拠が曖昧。これで解決したとは思えないあっさりさ。驚きの要素が欲しかった。