怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「ジングルベルと銃声の町!」

  • 静岡より帰ってきたのもつかの間、特捜最前線第90話「ジングルベルと銃声の町!」(脚本・長坂秀佳 監督・佐藤肇)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


[ストーリー]
男の射殺死体が発見された。被害者は再起を果たしたばかりのトランペッター村島。捜査に当たる特命は、現場でトランペットを吹いていた浅野を逮捕する。彼は村島の弟子。横暴な村島は浅野の才能を認めようとはせず、日夜暴力をふるっていた。浅野に殺意が芽生えてもおかしくはない。だが、浅野は頑強に犯行を否定、死体があったことは知らずトランペットの練習をしていたと供述する。状況は圧倒的に浅野不利。だがドラムの経験のある津上には、殺人を犯した直後、平然とトランペットを吹けた浅野の心理が理解できない。犯人は別にいて、浅野は真実を話しているのではないか。津上は浅野のアパートで聞き込みを開始。だが住人たちは皆、浅野のことを嫌っていた。浅野という人物像が掴みきれない津上。やがて住人たちは、犯行時刻前後に浅野を目撃したとの証言を始める。
銃声は正午を知らせる工場のサイレンの直後に鳴った。つまり犯行は正午。だが、住人の証言により、11時40分から12時20分まで、ほほ完璧なアリバイかできあがる。
11時40分 サンドイッチマンが酒を買いに行く浅野を目撃
11時52分 靴磨きが村島の部屋を掃除している浅野を目撃
12時00分 ホステスが洗い場で洗濯をしている浅野を目撃
12時10分 おでん屋が洗車している浅野を目撃
12時20分 女子学生が洗車を終える浅野を目撃
浅野を嫌っている住人ちが彼をかばうはずもない。では、浅野は無罪なのか。神代はあまりに完璧すぎるアリバイに疑問を抱く。

  • 死体発見の前後、現場付近では中学生が録音機を持ち、町の音を収集していた。当然、銃声もトランペットの音も入っている。この伏線がきいてくる。トランペットの演奏にも癖があり、現場でトランペットを吹いていたのは浅野に間違いないとの証言が。彼はますます不利になる。
  • 揃いすぎているアリバイ証言の謎はすぐに察しがつく。だが、問題は真犯人。
  • 某作家による偉大すぎる名作と同じパターン。バリエーション製作がほぼ不可能と思われていたあの作品をこうした形で取り入れる発想は見事。当然気づくべきだったのだが、煙幕をはられ見落とした。
  • その「煙幕」とは、12時20分の証言をした女子学生。彼女がいなければ、あっさり真相を見抜いていたかもしれない。
  • 長坂秀佳は荒木茂のドラムが本当に好きだったようである。
  • 明日は特捜最前線史上でもド級の名作。まさに「特捜新本格」とも言える「東京殺人ゲーム地図!」が放送される。
  • 長坂秀佳賛歌を最後まで読む人はいないだろうと思っていたら、「結末が書いていないので気になる」とのメールをいただいた。こういう場所で真相までばらす訳にもいかないので、気になる方はメールをください。完全版(?)を送ります。