怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「死刑執行0秒前!」

  • 特捜最前線第85話「死刑執行0秒前!」(脚本・長坂秀佳 監督・天野利彦)を見て、あまりの面白さにふらふらのふらふらとなる。


[ストーリー]
造成地より、男性の白骨死体が発見された。指が3本、金歯の位置などから、14年前に行方不明となった宍倉であると判明。船村刑事は、その事実を拘置所にいる阿久根稔に報せる。
14年前の昭和39年8月21日、高利貸をしていた阿久根一家4人が出刃包丁で惨殺、用心棒として同居していた宍倉も行方不明となった。警察は被害者の息子阿久根稔を逮捕。一度は自供した稔だが、裁判では無罪を主張。だが、判決は死刑。船村は当時の捜査に疑問を持っており、密かに内定をつづけていた。そしてついに、重要な証拠となる宍倉の死体が発見されたのだ。
ところが、刑務所所長から意外な事実を知らされる。明日午後3時、阿久根の死刑が執行されるという。阿久根の無実を証明するためには、真犯人を逮捕するしかない。残された時間はわずか。船村はその足で、古書店を営む君塚を訪ねる。君塚と船村は長年の友将棋友達。だが、家に上がった船村は君塚に対し、殺人容疑で逮捕する旨を告げる。
14年前、君塚の工場は経営不審であった。彼の妻は君塚に内緒で阿久根一家から金を借りた。しかし、結局、返済することができず、生まれたばかりの三女とともに自殺していた。一家皆殺しはその復讐ではなかったか。船村は14年前から、君塚を本犯人としてマークしていたのだ。
阿久根稔を救うため、最後の取り調べが始まる。君塚は当然、犯行を否認。さらに、須藤検事の邪魔が入り、調べは遅々として進まない。神代の機転により、取り調べは地下室へ。監禁同然の状況下、一対一の攻防はつづく。

  • 第一ラウンドは船村対須藤検事。阿久津を犯人にしたい須藤の強硬な弁説。凶器についていた指紋、金庫の指紋、さらに逮捕時、金庫より盗まれた血痕つきの金を所持していたこと、父親とは折り合いが悪く、犯行2時間前、「殺してやる」と叫び家を飛び出していること……。
  • 包丁は帰宅したときに触れただけ、金を盗んだことは認めているが、殺人は否定している。犯行後何者かが死体を担ぎ、現場から車で逃走するのを目撃していた者がいる……など船村は必至の抵抗を試みるが、須藤の意見を覆すことができない。
  • 第二ラウンドは船村対君塚。君塚のアリバイ。犯行時刻、自宅内で子供をあやす姿をガラス障子越しに目撃されている。さらに、読経する鐘の音もきこえたとの証言も。船村は地下室の暖房を28度に上げる。君塚は大の暑がり。犯行当日8月21日の気温は29.5度。暑がりの君塚が、どうしてガラス障子を閉めたまま、子供をあやしていたのか。自宅にいたのは、替え玉ではなかったか。
  • 君塚は空手をやる。用心棒宍倉の死体には、空手の打撃による肋骨骨折の跡が。「空手」の痕跡を隠すため、宍倉の死体だけは運び出し、山中に埋めた。船村の推理は徐々に君塚を追い詰めていく。死刑執行まで残りわずか。船村の思いは届くのか。
  • 現時点で特捜長坂秀佳作品のベスト5を上げろと言われれば、本作は第2位になる。
  • とにかく、視点がクールである。死刑を待つ阿久根稔はあまり登場せず、要所を締めるだけ。残りは船村対君塚の対決に絞られる。
  • 須藤検事を演じる菅貫太郎がこれまた素晴らしい。彼との第一ラウンドにおいて、阿久根犯人説の全てが語られる。情報の提供が緊張感の断絶なしにスムーズに行われる。
  • ラストについては何も言うまい。見たら、泣くよ。