怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「包帯をした銀行ギャング!」

  • 特捜最前線第202話「包帯をした銀行ギャング!」(脚本・長坂秀佳 監督・野田幸男)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。


銀行強盗の発生件数158件、一週間に3件の割合。うち検挙86件、未解決72件。1月7日、八王子の東亜銀行が襲われた。つづいて1月9日、北板橋の大日銀行が、1月14日、狛江の三星銀行がそれぞれ同一犯と思われる強盗に教われ、現金が奪われた。だが、被害金額はいずれも少量。しかも、事件発生と前後して、謎の現金投げこみ事件も多発していた。防犯ビデオに映った犯人の左手には常に包帯が巻かれている。橘は被害金額と投げこみ事件の総額が一致することを確認、独自に捜査を始める。手掛りとなるのは、昨年起きた西横浜銀行の現金強奪事件。犯人の特徴的な歩き方、右肩を上げる癖などが酷似しているためだ。西横浜の事件では、数人の容疑者が浮上。最有力容疑者とされた松宮は、取調べを苦に自殺をしていた。彼の死後、同一手口の犯行が行われたのであるから、松宮は無罪であったことに。
死んだ松宮の姉、景子の協力を得て、橘は捜査を進める。彼は、西横浜銀行事件の容疑者リストの中から、一人の男に目をつける。吉崎物産課長の芳賀である。身長、歩き方などは犯人と酷似している。そんな中、2月2日、三軒茶屋で新たな銀行強盗が。芳賀にはアリバイがない。しかし、決定的な証拠もない。彼が犯人であると確信した橘だが、アリバイは容易に崩れない。続発する銀行強盗。その真相は。

  • いわゆる倒叙的な見せ方と意外な犯人。その両立を狙った意欲作。意欲的すぎて、ある程度の人間であれば、速攻、犯人が判ってしまう。
  • 細かなディティールをこれでもかと積み上げていくのは、長坂脚本の魅力。芳賀がどこに車を停めたか、車種は何かなど、曖昧な点を極力残さない姿勢が、刑事対犯人の緊迫感を盛り上げる。
  • 銀行強盗の被害金額とまったく無関係と思われていた現金投げこみ事件。その金額がぴたりと一致するあたりは、本作品の白眉。その合計金額を橘が読み上げ、高杉が電卓で撃つ。その鬼気迫る電卓の早撃ち!! 轟一番も真っ青である。
  • 強盗が使用した拳銃の入手ルートが最後の関門。その鍵を握るヤクザを橘は捕らえる。だが、取調べにも口を割らない。そこで橘は……ボイラー室に男を監禁。ボイラーの轟音の中、拡声器を使って「吐け」と怒鳴りつける。ヤクザはへろへろになって「水をくれー」。その前後が硬派かつウエットな作りであるだけに、この場面だけが3D映像のように浮き上がっている。腹を抱えて笑う。ここ必見。
  • 長坂秀佳らしい「何かやってやるぜ」という気概に満ちてはいるのだが、ネタがあっさり割れてしまう点、拳銃の入手方法があまりに偶発的である点などやや迫力に欠ける部分はある。だが、それを補ってあまりある、不思議な演出。電卓とボイラー室は必見でありますよ。これ、脚本の段階から指定されていたのだろうか。