「刑事コロンボ ルーサン警部の犯罪」
エミー賞を獲得した人気テレビシリーズ「刑事ルーサン」。その中で主人公を演じているルーサン警部ことウォード・ファゥラーは、番組プロデューサー久レアの殺害計画をたてる。ビデオを使ったアリバイトリックを駆使し、クレアがレストランにて行きずりの強盗に射殺されたように見せかけるのだ。計画は成功。テレビ撮影をつづけるウォードの前に、殺人課コロンボ警部がやって来る。名警部ルーサン対コロンボ。勝者はどちらに?
- これといって評価されることもなく、かといってボロクソに言われるわけでもなく、どことなく影の薄い本作。
- 対照的にルーサン役、ウイリアム・シャトナーの輝く魅力、コートについた弾痕などよく錬られた手掛り、など評価できる点は多々あるのだが……。
- 何より私が気になるのは、犯人の味付けである。犯人は時としてルーサン警部、時としてウォード本人と現実と虚構を織りまぜてコロンボと対決する。これはもはや、倒錯者にしか見えない。お遊びと言えば、お遊びなんだろうけど……。
- ただ、注目すべきは動機の面白さ。表面上は利害やプライドが犯行のきっかけになっている。ただ、犯行前、ウォードとクレアのやり取りを聞く限り、これはもう、「自分にもできることを証明するための」犯罪である。「できるわけがない」と鼻で笑われたことに対し、できることを現実で証明してしまった犯人。これは素晴らしい。もっともそう考えると、やはり、ウォードは現実と虚構の区別のつかない、倒錯者ということになるが。