怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「六法全書を抱えた狼!」

  • 特捜最前線第133話「六法全書を抱えた狼!」(脚本・長坂秀佳 監督・野田幸男)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

[ストーリー]
ある夜、吉野刑事は自殺しようとする女性を助けた。彼女の名前は清水郁子。警察庁庶務課に勤め、司法試験の勉強中であるという。彼女はある男に暴行され、それを苦に自殺を図ったという。その男とは、検察庁で実務実習中の五条健一郎。頭脳明晰、スポーツ万能、さらに大物代議士を父に持つ、エリート中のエリートである。吉野は五条に同行を求めるが、法律をたてに拒否される。吉野は五条を告訴するよう、郁子を説得。五条は書類送検される。しかし、結局は物証不足により不起訴。それを知った郁子はマンションの屋上から身を投げる。
怒りに燃える吉野。だが、現在の法律では、五条を逮捕することはできない。せめて、五条自身の自白があれば……。
五条に貼り付き、徹底的にマークする吉野。飲酒運転の現行犯、軽犯罪法、あらゆる法律を使い、逮捕しようとする吉野だが、知能、体力、すべてにおいて、五条は彼を上回る。そんな吉野に神代はいう。知能、体力で負けていても、一つだけ勝てるものがある。「それは気力だ」
たった独りでの張り込みはつづく。五条は雇い人8人を使い、家の前に張り込む吉野に休みなく質問をさせる。吉野を眠らせない作戦だ。それでも吉野は五条から離れない。その妄執に、完璧であった五条のガードも崩れていく。
追い詰められた五条は、ついに吉野を告訴。このままでは、吉野の免職は免れない。取り調べ開始まであと1日。その間に、吉野は五条を自白に追い込まねばならない。パーフェクトなエリートと気力勝負の刑事。その最期の対決は……?

  • ある意味、伝説となっても良い、恐るべき一本。ラスト10分は完全にホラーである。ゾンビコップ吉野の姿は、笑う暇を与えない迫力。どうして、あそこまで凄いことになったのだろう。誠直也氏もあのシーンのことはよく覚えているらしい。
  • 五条が盾にする法律は刑法130条、220条、230条、194条、刑事訴訟法210条など。吉野は往来妨害罪、遺棄罪、警職法2条・職務質問などで対抗する。法の使い方自体はファンタジーだが、細部への奇妙なこだわりと固有名詞の使い方が長坂秀佳脚本の魅力。
  • 強姦日記をつける鬼畜エリート五条を演じるのは、犯人3度目夏夕介。あろうことか、これを演じた約5ケ月後、氏は「叶刑事」としてレギュラー入りする。長坂秀佳氏の傑作には叶刑事ものが多い。夏夕介を気に入っていたのだろうか。
  • とにかく、この時期の長坂秀佳氏は恐ろしい。「亡霊・帰ってきた幽子!」をかわきりに、「非情の街・ピエロと呼ばれた男!」←死ぬほどの傑作、「6000万の美談を狩れ!」そして本作を立て続けに発表、さらに3週間後には、あの「誘拐」前後編が登場する。