- 身内は入院中だが、あれこれ必要以上のことをやっても仕方ないので、極力、平常通りに生活する。昨年、ひどい目にあったので少し学習したのである。
- ということで、M田氏のお誘いで、立川志の輔独演会へ。名人が亡くなったり、引退したりと寂しい限りの落語界だけれど、いまのところ、日本一は、立川志の輔師であると思う。前回は「茶の湯」をたっぷり聴かせていただいた。今回はまず「千両みかん」。思いこみについてのマクラから一気に。米朝落語全集でこの噺を愛聴していた身としては、番頭のテンションに圧倒される。しかし、「夏にみかんがない」、ことを今の人は理解できるのだろうか。「千両みかん」のキモは、みかん問屋の番頭にあると思っている。上方版は商売と人情の微妙なバランスに立っているが、志の輔版は「気骨のある商売人」で押し通してあって、東京らしい凄みを感じた。みかんを食べる場面をいちいち描写しないのは志の輔にぴったりの演出で、これも好印象。とても素敵な「千両みかん」だった。
- 中入り後は「へっつい幽霊」。この噺は鈴々舎馬桜師の独演会で聴いている。その後「へっついを知らないの?」と怒られたため、勉強した。おかげさまで、今回はすっきり聴くことができました。落語には愛らしい幽霊や粗忽な幽霊が登場するが、とにかく生前の性癖をそのまんま持って幽霊になるところが面白い。博奕好きは死んでも博奕好き。そこにつけこむ怖い者知らずの男とのやり取りがおかしい。幽霊を人間が出し抜く展開なんて、落語くらいのものではないか。
- 後半はいつものキレが今ひとつないかな、と思っていたら、夏風邪で大変なのだそうだ。
- 大きなホールでの落語だったが、すごく良い席で、志の輔師を間近で見ることができた。素晴らしい夜をありがとう! M田さん、貴重なチケットを入手してくださり、感謝感激です。