怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

杉浦千里展

Muho2009-03-21

  • とある方からのメールで、「杉浦千里展」が開催中であると知る。杉浦氏は、細密画、特に甲殻類の博物画を描かれていた方で、2002年、39歳という若さで急逝された。氏は博物画を発表する一方で、怪獣ガレージキットの原型師としても一時期活動されており、特にボークスから発売されていた後期ウルトラシリーズはほとんど杉浦氏の独壇場でもあった。似ている、似てないを超越した、杉浦節とも言うべき造型に私は魅せられ、そのほとんどを購入、制作して今も机の上に並べてある。
  • ボークスの怪獣ガレージキットはその後、打ち止めとなり、杉浦氏の原型作品を目にすることもなくなった。あるとき、平成ウルトラマンシリーズのスタッフの中に「杉浦千里」という名前を発見。怪獣のデザインなどを手がけておられるとのこと。果たして同一人物なのだろうか。何とか確認する手だてはないものだろうかと考えているところに、杉浦氏逝去の報が飛びこんできた。いくつかの雑誌に載った追悼記事などを読んだのだが、不思議と「ガレージキット」に触れているものはなかった。杉浦氏とガレージキットの繋がりは謎のまま、長く私の頭の中にあったのだが……
  • 「杉浦千里展 生き物のきらめき 知られざる博物画の世界」は横浜市神奈川区民文化センター「かなっくホール」で開催中とのこと。さっそく出かけていった。三階のギャラリーには、氏の残された博物画が多数! その艶やかさ、緻密さに目を奪われる。さらに、博物画ができるまでの過程を詳細に綴ったコーナーもあり、息が止まるほどの感銘を受けた。蟹の甲羅の文様、手足の毛、その一本一本までが計算されたフリーハンドによる。これはすさまじい世界だ。こうした作品が「作品保存会」の手によって後世に引き継がれていくことは、素晴らしいことでもあるし、当然のことでもある。
  • ギャラリー内にある杉浦氏の略歴内には、「怪獣の原型制作」という記述もあった。キングマイマイやブラックキングやバルタック星人を造型されていたのは、やはり杉浦氏であったのだ。長い間の謎にようやくピリオドが打てた。
  • 緻密で細やかな博物画と大らかで優しい怪獣造形物。一見、相対するようだが、丸みのある華やかな生物感という点に杉浦氏の卓越した感性を読み取ることができる。杉浦氏が造型をされていたのは、「怪獣冬の時代」。いま、怪獣ガレージキットは一時期の低迷を脱して、歴史あるジャンルとして定着しつつある。もし杉浦氏が存命であったから、ワンフェスかどこかで、作品を発表されていたかもしれない。