- 二日もたてば、怒りも治まるかと思ったが、まったくその気配なし。自分自身に対し、なるべく誤魔化すよう振る舞ってみたが、どうもできそうにない。
- 私がやられたのは、あの日、いきなり電話がかかってきて、「身内が死にそうだそうだか、葬式のことや坊主の手配はちゃんとしてあるんだろうな。おまえが一人で介護をして、あらゆる雑用をこなして、大変なのは知っているが、坊主の顔つなぎもしていないとは何事だ、バカめ。さっさと探してこい。そうでないと、おまえの身内の骨は墓に入れてやらんぞ。あ、それから、おまえの身内の所有物は15年にわたって、俺のかわいい息子が賃料も払わずに使わせてもらっているが、相続があるのでそれを返せだなんて順番が違うだろう、そんなのは葬式の準備が整ってから言え」と怒鳴られたことだ。
- いくばくかの誤解と耄碌もあるだろうが、少なくとも、たった一人の身内が死ぬかもしれん状態にある男に、電話でまくしたてる内容ではないだろう。
- 本人には自分がどれだけのことをしたか、私をどれだけ追いこんだのか、何の自覚もないだろう。次に会ったときは、けろっとして、「晩飯でも食おう」と言うだろう。でも、もうあなたと飯を食うことは一生ない。あんたが保証人になってくれた今の住み処も、次の更新で出るつもりだ。
- ただし、身内の葬式はちゃんとやるし、骨は絶対に墓に入れさせる。所有物もきっちりと取り返してみせる。それが終わったあと、あんたと会うことはもうないだろう。