怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

合わせとはずし

  • 薬のおかげか、腫れはひき、右目の充血もほぼ消えた。「特捜最前線」の見過ぎだ、「ガンダム戦記」のやりすぎだ、シンナーの嗅ぎすぎだ、「阪神」を応援しすぎだ、など様々な理由が考えられるが、まあ、直りそうなので良しとしよう。
  • 「笑わせて笑わせて桂枝雀」を読み終わった。1999年4月に亡くなられた枝雀師匠を振り返る一冊。私が枝雀師匠の落語を聴いていたのは、1980年前後。マクラからサゲまで、ただ一言の無駄もない高座に圧倒されたものだ。正直いって、現在CDで発売されている平成以降の高座は、あまり好きではない。何となく、考えすぎていて無駄が多い気がするのだ。78年頃から80年初めまでに録音されたものは、本当にすさまじい。スピードがあってリズミカルで、なおかつ、落語として完璧な仕上がり。手許にある数本のテープをくり返し聴く毎日である。
  • 枝雀師匠の唱える落語論に必ず出てくるのは、「緊張と緩和」。その中でも、「合わせ」と「はずし」の話は面白かった。シャレというものは、普通、「合わせ」で入る。(以下引用) 

「あなたはキリストですか」
「イエス」
「これは狂言ですか」
「ノウ」

枝雀師匠の芸はこれとは逆、「はずす」ことから始まっていたと本著では述べている。(以下引用)

「定吉、郵便局へ行ってきてくれるか」
「承知しました」
飛び出して行った定吉、すぐに戻り
「行ってきましたが、別に変わったことはございませんでした」

 

  • この「はずれ」によって、枝雀師匠の落語は面白くなった。反面、まったく理解できない人も生じたと思う。
  • うまく「はずれ」れば、それだけ噺は面白くなる。いかにうまくはずすか。これは「ミステリー」にも共通する命題だと思う。