怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

訃報

Muho2005-11-09

  • 桂吉朝師匠が亡くなった。米朝師匠を継ぐ人はこの人以外にいないと思っていたのに。50歳。落語の神様はひどいことをする。上方落語はもう終わりかな……。
  • 吉朝師匠は毎年、ゴールデンウイーク中に東京で独演会を開かれていた。2000年ころから3年、毎年通った。米朝師匠のネタだけでなく、枝雀師匠の得意とされていた「鷺とり」なども演目にあり、こういう人がいるのなら大丈夫だと安心したものだ。米朝師匠が歌舞伎座で「百年目」をやられたとき、前座をつとめたのが吉朝師匠。NHKの放送では、米朝師匠のちょっとした間違いに、舞台そでで「あちゃー」と顔をくしゃくしゃにしていた。吉朝師匠の死で、「地獄八景」「百年目」を演じられる人はいなくなった。
  • それにしても、枝雀、吉朝と弟子を亡くした米朝師匠の心情はいかばかりか。
    米朝師匠の著作「私の履歴書」の中で枝雀について触れている。高座に出ることが出来ないと泣いて謝る枝雀に対し、「私はこういうしかなかった。『私にはそういう経験がない。なったことがないさかい、どないもいうてやりようがないんや』」
  • 弟子を想う米朝師匠の心がよく判る一節。だが、逆に考えれば、米朝師匠は、落語ができなくなったことがない。いついかなるときも、常に高座にあがれるコンディションでいたということで、その精神、肝の座り方に、私を含む現代の人とは違う「強さ」を思いきり感じたのでありました。