怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と「6000万の美談を狩れ!」

  • 特捜最前線第131話「6000万の美談を狩れ!」(脚本・長坂秀佳 監督・宮越澄)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

[ストーリー]
東都経済大学の校舎屋上から、警備員野尻が墜落死した。図書事務室が荒されており、屋上には挌闘の跡。さらに、野尻の同僚、吉澤は屋上から逃げる人影を目撃していた。何者かが窃盗目的で忍び込み、野尻とはち合わせ。追ってくる野尻を突き落とし逃亡した……。橘は物盗りによる殺人と断定する。一方桜井は、図書事務室のテーブルに残っていた湯のみ茶碗の跡、流し台にあった燃え残りの写真に着目。野尻は他殺に見せかけた自殺ではないかと推理する。自殺か他殺か。問題は野尻の遺族が受け取る生命保険等の金額にあった。
 野尻は元池袋署に勤務する刑事。だが5年前、妻が脳血栓に倒れ、その看病のため辞職。警備員をしながら、入院費を払い、二人の子供を進学させた。しかし、そのために800万の借金を背負い込んでいたのだ。自殺か他殺かにより、受け取れる金額はまったく違ってくる。

自殺の場合       他殺の場合
遺族見舞金 55万    270万
死亡退職金 700万   2600万
生命保険  700万   3500万
合計    1455万   6370万

 野尻は遺族に多くの金を残すため、偽装自殺を決行した。桜井はそう主張する。そもそも物盗りなら、どうして金目のものの少ない図書事務室を狙ったのか。現場にあった湯のみの跡は日本酒によるものだった。野尻はここで家族と別れの盃を交わし、家族の写真を流しで燃やした。つまり、すべては野尻の偽装である。
 だが、同僚吉澤による目撃談はどうなるのか。吉澤は過去数回、職務中に飲酒をしていた事実があった。酩酊していた彼に判断能力はなく、目撃した人影も幻覚であったと思われる。いくら酩酊していたとしても、人影を見間違うはずはない。橘は反論。現場に落ちていた懐中電灯には、人を殴打した痕跡があった。屋上に人がいたのは間違いない。野尻の借金は800万。1455万円で充分まかなえる金額だ。どうして偽装をする必要があるのか。今まで泣き言一つ言わず、家族を支えてきた野尻。彼が家族を残し自殺をするはずはない。
 橘と桜井。二人の初動見解はどこまでも対立する。お互いを意識しながら、捜査を進める二人。自殺か他殺か。その真相は……?

 

  • 地味だが実は大好きなエピソードであったりする。
  • ナンバー1(主人公)対ライバルの戦いというのは、見ていてもつまらない。たいていの場合、ナンバー1(主人公)が勝つからだ。負ける場合でも、負けるであろうことが雰囲気ですぐに判ってしまう。例を上げれば、キン肉マン対ウォーズマンのようなもの。本当にわくわくするのは、ナンバー2同士の戦い。これはどちらが勝つか判らない。どちらが勝っても話が成立するからだ。例を上げれば、テリーマン対ラーメンマンのようなもの。橘対桜井というナンバー2同士の戦い。恐れ入りました。
  • 野尻の保証人として田口計登場。このキャスティングは素晴らしい。
  • 初見の時は橘と桜井が真正面からぶつかりあって火花を散らしていた印象があるのだが、見直してみると、橘は徹底して防御。桜井が攻めつづけていることに気づく。桜井の出してくる反証を橘は論拠を示して否定するだけ。そんな感じもする。公平な目で見れば、終始、桜井が有利にも見える。
  • 勝者も敗者も感じさせない絶妙のラストとなっているのだが、欲をいえば、もう一ひねり欲しかったかなぁ。
  • でも、「甘いねぇ。そんなんじゃ、捜査はできんぜ」「捜査はできん? 誰に向って言ってんだ、きさま」のやりとりだけで、もうふらふら。同じセリフ、本編と予告ではアングルが違う。予告バージョンの方がよかった気もする。