怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と凶弾2・面影に手錠が光る!

  • 特捜最前線第51話「凶弾2・面影に手錠が光る!」(脚本・長坂秀佳 監督・佐藤肇)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

[ストーリー]
昭和53年、3月15日、午後6時58分、神代の一人娘夏子死亡。21才。
神代はその日より、姿を消す。特命課の指揮もとらず、夏子の葬儀にも現われない。動揺が広がる特命課に、暴力団員が襲撃されたとの報告が。しかも、犯人は神代であるらしい。神代の暴走は続き、暴力団員が次々と血祭りに上げられる。はたして、神代は私情に走り、闇雲に暴力団員を襲っているのだろうか。
桜井、船村たちは、襲われた者たちが、すべて立花組の構成員であることに気づく。立花組は暴走族と過激派が手を組み、出来上がった新興の暴力団。組長を務めるのは、福田という男。だが、そのさらに上に、大組長が存在するという。その正体は福田と顧問弁護士しか知らない。三丸商事のけん銃密輸に端を発した事件は、どうやらこの大組長が仕組んだものらしい。
三丸商事は倒産の危機を乗り越えるため、金融会社から金を借りた。だが、その会社が暴力団であった。高利を要求され、返済不能となった三丸商事は、けん銃の密輸を強要される。その事実に気づいた沢田孝平は事故にみせかけ殺害された。そして、証拠を持っていると思われた母親イネも、同じく殺害。特命課の捜査に追い詰められた三丸商事社長大田黒、大組長の素顔を見てしまった夏子もまた殺害されたのだ。
神代は無目的に行動しているのではない。三丸商事を陥れた金融会社が立花組であると突き止め、影の黒幕、大組長を誘きだそうとしているのだ。
だが、そのやり方は、法を無視している。このままでは、神代はクビ、特命は解散という事態にもなりかねない。桜井は課長代行となり、特命の指揮を取る。何としても、神代を止めるためだ。
そんな中、神代はシルク商事に現われる。シルク商事は偽装倒産を仕組んだ三丸商事の新会社である。顧問弁護士を追い詰める神代。わずかに遅れて踏み込んだ特命課は、そこに弁護士の絞殺死体を発見。はたして、神代の犯行なのか……?
やがて判明する大組長の正体。娘の仇を前にした神代の運命は……?

  • あえて書いていないが、今回は全編通じて、ある約束事が設定されている。テレビにおいては、あり得ない「お約束」。それを最後まで力技で押し通してしまった脚本には感服するしかない。正直、相当に苦しい場面もあるのだが、志しという点で、脱帽するしかない。
  • 大組長の正体は、まぁ、前編の半ばでほぼ判ってしまうのだが……。後編は判ってみているとこれまたいろいろな発見があって面白い。画面作りは極めてフェアな形でなされているのだ。フェアすぎて、ネタがわれてしまうこともあるが。
  • 神代が感情むき出して突き進む、といったエピソードはこれ以外に記憶にない。神代編としては屈指の名作「挑戦三部作」や足ながおじさん編「面影」でも、冷静さを失うことはなかったし。それだけに、最終回の509話で、神代が一人暴走していく中、桜井が言う「あのときを思い出します」にぐっとくる。
  • 野暮なつっこみとしては、あれだけのことをしても、次回からは平然といつものスタイルで特命課は存続している。まあ、「帰ってきたスキャンダル刑事!」よりはましか。
  • どちらにしても、500話以上もつづいた「特捜最前線」の数少ない転機の一つ。次回よりは紅林、橘登場編。