怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

刑事野呂盆六2 母という名の罠

  • ずいぶん前に土曜ワイド枠で放送された「(天才)刑事・野呂盆六2 母という名の罠」を見る。コロンボへのオマージュとしてスタートした野呂盆六として見るとグダグダだったけれど、誘拐の長坂秀佳の作品として見れば、なかなか良い出来で満足した。少なくとも、二時間ドラマとしては、驚異的なクオリティであると思う。

 

飛騨で旅館を営む次田吟子の娘、小兎子が行方不明となった。偶然、旅館に居合わせた野呂盆六は、誘拐も含めた捜査態勢を敷く。まもなく、旅館の泊まり客の一人であった鍋島の射殺死体が見つかる。死体は移動された痕跡があった。自殺偽装を苦もなく見破った野呂は、被害者のバイクが見つかった旅館裏の祠に着目。その前に残された女性の足跡、車のタイヤ痕などから、小兎子の姪で女優の朝霧早矢子に目をつける。タイヤ痕は彼女の車と一致。アリバイなどもなく、彼女ならすべての犯行が可能となる。だが、早矢子は死体移動は認めたものの殺人は否定。小兎子は誘拐されており、自分は犯人から脅迫を受けていたと主張する。彼女の携帯には、監禁された小兎子の映像。ボイスチェンジャーを使った犯人からのボイスも。早矢子の証言は筋が通っているものの、自作自演の可能性も拭いきれない。彼女は誘拐犯なのか、それとも被害者なのか。そして、小兎子の行方は……?

 

  • 野呂盆六として作られているため、まったく評価されていないけれど、実は、なかなか周到に作られたミステリードラマで、そこは長坂秀佳だなと素直に感心する。監禁されている小兎子が喘息の持病を持っていて、それを活かしたタイムサスペンスも用意されている。
  • ただ、真犯人の意外性に酔ってしまって、「犯罪計画」全体を見た場合、首を傾げたくなる部分も多数。犯人の最終目的が何であったのか、さっぱり判らないところが最大の傷か。計画的な部分と成り行き的な部分の段差が、何ともいえないちぐはぐ感を生んでしまって、ちょっと残念。「トリッキーな長坂」と「誘拐の長坂」が真正面からぶつかって、自壊してまった印象。
  • それと、ラストの小兎子発見は、あの二人に見つけさせるべきではなかったか。あそこで刑事たちが駆けつけては台無しだ。野呂がどれだけ攻めても自供しない犯人。そのまま最後まで行けば、美しかったのになぁ。
  • ということで、今週土曜日は、「刑事・野呂盆六3」の放送です。倒叙としての完成度はどうか判りませんが、とにかく、何か仕掛けてくる、野心的なシリーズであることはたしか。かなり楽しみであったりする。