怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

第一容疑者 姿なき犯人 前編と後編

Muho2007-10-13

「第一容疑者8 姿なき犯人」(前)(後)

  • 2003年に制作された作品。 前作より八年ぶり。 本年のエミー賞獲得を記念して視聴。CS放送を録画したものだが、字幕で見たいという欲求が強まり、DVD-BOXの購入を夢みてしまう。原題は「Prime Suspect6」となっているが、日本で放映した「第一容疑者4-6」は、すべて「Prime Suspect4」となっているため、何だか判りにくくなっている。DVD-BOXは八枚組とのこと。エミー賞をとった、「Prime Suspect7 The Final Act」のみ、日本未放映ということか。
  • マンションの建築現場で女性の遺体が発見された。体中に火傷の跡。煙草の火を押しつけられたらしい。両手両足に縛られた跡、拷問を受けた後、手で絞殺されたと思われる。顔は無傷であったが、身元、国籍は不明。検死の結果、体には骨折などの古傷が見られ、この事件以前にも拷問を受けた形跡が。勤続三十年、刑事部七年、五十四歳になったジェーン・テニスン警視が捜査を担当。移民、マスコミ、政治という嵐のような現場に立つはめとなる。やがて被害者の身元が判明。名前はサミラ。出身地はボスニアだった。サミラには病院で清掃をしている姉がいる。彼女を手始めに犯人に迫ろうとするテニスン。さらに、死体発見現場付近の監視カメラに写った不審車両の捜査から、一人のボスニア出身者が容疑者として浮かぶ。テニスンの前に立ちはだかるのは、ボスニアの壁。事件の鍵となるのは、紛争中に行われた虐殺。サミラたち姉妹は、虐殺の生き残りだったのだ。姉が見たという「悪魔」はイギリスに存在するのか? 犯行を全面否定する第一容疑者とテニスンの攻防がつづく。
  • 誰がやったかは重要ではなく、テニスンたちが比較的早い時期に突き止めた容疑者が、「何をやったのか」「どうやったのか」を突き止めるのが「第一容疑者」の妙味。今回もちゃんとそのパターンを踏んでくれている。
  • 部下との不仲、徹底的に捜査を妨害する上司も健在。そうした諸々の要因でテニスンの捜査はいつも行き詰まり窮地に追いつめられる。そのたびに、不屈の精神で立ち上がり、犯人を追求していく姿に、毎回、胸を打たれるのだ。今回はその度合いが特に凄く、三回、四回とこれでもかとテニスンは失敗する。最後の一手は、目新しいものではないけれど、あ! それがあったかとヒザを叩きたくなる。前後編会わせて三時間を超えるが、それだけの価値はある。いいものを見た。虐殺は決して遠い時代のものではなく、すぐそこにあるのだと考えさせられる。日本がかってに遠いところにいるだけで、世界はまだ虐殺の中にいるわけで、ちょっとしたはずみで、過去の亡霊が浮かんでくる。