怪獣万歳!

muho2’s diary

小説を書いて暮らしている大倉崇裕です。怪獣が3度の飯より好きです。政治的な発言は控えていましたが、保険証廃止の動きで頭が沸騰し、しばらく叫き続けていきます。自分自身大病もしたし、12年間親の介護もしました。その経験からも、保険証は廃止しちゃダメ。絶対!

長坂秀佳と脱走爆弾犯を見た女!

  • 特捜最前線第141話「脱走爆弾犯を見た女!」(脚本・長坂秀佳 監督・宮越澄)を見て、あまりの面白さにふらふらとなる。

[ストーリー]
5年前に逮捕され公判中であった八尾崎が脱走した。彼は過激派組織の中で、「爆破の帝王」と呼ばれる爆弾作りの天才。新たな爆破事件を防ぐため、特命課は脱走事件の襲撃犯二人を追う。まもなく、その一人、小暮という男の身元が割れた。彼を尾行し、アジトを突き止める特命課。踏み込もうとしたそのとき、アンナというホステスが現場に駆けこんでくる。彼女は前夜、八尾崎と思われる男の密談を立ち聞きしたというのだ。それによれば、「紅林」「踏み込んだらドカン」「30人以上が死ぬ」という。アンナは1年前、万引犯と間違われたおり、紅林に救われていた。恩人である紅林が狙われていると知り、現場に駆けつけてきたのだ。しかし、その騒ぎの中、小暮たちは逃亡。捜査は振り出しに戻る。
特命課員たちは、アンナの証言を信用しない。というのも、彼女には虚言癖があり、その報告が各所轄に残っているのだ。唯一人、紅林だけは、彼女の言葉を信じてやろうとする。前夜、八尾崎達の密談を聞いた場所を捜す紅林。だが、酔っていたアンナの記憶ははっきりしない。
まもなく八尾崎脱走の動機が判明する。勾留中、彼の妻子が心中していたのだ。その件を逆恨みした八尾崎は、彼を逮捕した東山田署への復讐を目的に脱走したと思われる。
やがて、自動車に積んだ爆弾で、交番が爆破。つづいて、東山田署にも爆弾が。爆発で署長の大林は重傷を負う。
しかし、それでも、紅林はアンナの言葉を信じる。「30人以上」が爆弾で吹き飛ばされる。その場所とはどこなのか。
神代は5年前の事件の関係者を当たる。目撃証言をした者、捜査に当たった刑事。全員か八尾崎の標的となり得るのだ。事件の目撃者は3人。その3人は町内会の慰安旅行で観光バスに乗っている。
アンナと紅林は直感する。「30人以上」が爆弾で吹き飛ばされる場所、それはバスではないか。バスを追跡する紅林とアンナの前に、八尾崎たちが現われる。バスは既にジャックされていたのだ。
八尾崎はバスにコンピューター制御の爆弾をしかけていた。コンピューターの指示通りに走らなければ、即座に爆発する仕掛けだ。バスを運転することになった紅林。止まることを許されないバスは、爆弾と乗客を積んだまま、走りだす。その目的地は……?

  • 長坂秀佳版「スピード」である。というよりも、「スピード」そのまま。ただし「スピード」より、こちらの方が何十年も早い。そして、「長坂秀佳術」内で長坂氏が言及しているように、脚本の出来としてはこちらの方が上。爆弾バスにきちんと「目的地」が設定されているのだから。
  • 爆破の帝王と特命課の対決という図式ではなく、「ホラ吹きアンナ」を間に絡め、「紅林・アンナ」の追跡劇パターンをとったことがうまく効いている。暴走バスはあくまでもクライマックスであり、そこにいたるまでの緻密な描写が作品に厚みを与えている。
  • すべてが終わった後にある悲しいラストは真骨頂。これもまた、「スピード」に勝っている。
  • 「踏み込んだらドカン」はすごい。思わず「あっ」と膝を打ちたくなる。
  • 爆破の帝王を演じるのは快傑ズバット・東条刑事(斉藤真)。爆破シーンには、あの病院大爆発のフィルムも使われていてニヤリ。
  • 長坂秀佳氏いわく、「爆弾をどうやって止めるか、というのが難しかった」とのこと。いやもぅ、呆気にとられます。参りました。「こんなことあるわけがない」とかほざく野暮なヤツは深海に沈めてやる。